壱ノ不思議 廊下の怪(5p)

 私は「うん」と返事をして、廊下を進んで行った。

 おばあちゃんの部屋の前まで来て、私は鼻からスウッと息を吸った。

 お線香がおばあちゃんの部屋から薫っている。

 これは白檀の香りだと、いつだったか雪絵お姉さんが教えてくれた。

 私はこの香りが好きだ。

「おばあちゃん、早紀です。入って良い?」

 私は、襖越しにおばあちゃんに声を掛ける。

「あらまぁ、早紀ちゃんかい? どうぞお入り」

 おばあちゃんがそう言うのを聞いて、私は静かに襖を引いた。

 開いた襖から、煙が廊下へ、スィーッと流れて行く。

 お線香の煙だ。

「早紀ちゃん、遊びに来てくれたのかい?」

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