ハリネズミの巣③
外靴が廊下を踏みしめる。その度に、緊張感が足先から心臓へと走る。いつ、どこで奴が待ち構えているか知れないのだ。逃げていてくれれば、なんて、弱気な事を考えてしまう。
頬に汗が流れる。全力疾走していた先程とは違い、雨に打たれていた昨日とも違い、その水滴は純粋な冷や汗だった。
体の先の感覚が変化していく。無くなっていっているのか、鋭くなっていっているのか。その違いさえ分からない。
……これでいい。もともと、この緊張をなくせるとは思っていない。僕はそこまで大きな人間ではないと知っている。
もっと、緊張しろ。この震えは、目の前に集中している証だ。
前を見ると、またもやゴム手袋が止まっている。『A』へ着いたという感じではない。リビングへと続く扉が閉まっている。
「……これは、遥の『道具』は要らなさそうだね。開けるよ」
杉越の言葉に、関ヶ原と二人で無言で頷く。
杉越がそれを受け、扉をゆっくりと開く。さっきと同じように、ゴム手袋がリビングの中へと入って行く。
それを視線で追いかけると、男が死んでいた。
「……っ」
僕が声にならない、悲鳴のような物を飲み込む。それは僕が冷静だったからではなく、むしろその逆、喉がひきつり悲鳴を出すこともままならなかったと言う方が正しい。
転がっている男は首が切断され、繋がっていなかった。
「……こいつ、私に『札』を貼った奴よ」
関ヶ原が少し青ざめた顔で、口を開く。という事は、こいつが『憑き札』の所有者。ゴム手袋も、男の手のひらで止まっていた。
何でだ?何で死んでいるんだ?誰が殺したんだ?誰が首を……。
駄目だ。怯むな。脳まで引きつらせるな。直視しろ。後ずさるな。
「杉越……」
杉越に声をかけようと、一歩リビングに近付いたその時、リビングのキッチンの陰から、じゃら。という音がした。
「伏せろっ!」
杉越がそう叫ぶと同時に、キッチンの陰から、十数個のビー玉が投げられた。
そのビー玉の弾幕が杉越に着弾すると同時に、ビー玉の表面から無数の針が現れ、
その針が消えると杉越は、体中から血を出して、無数のビー玉と共に僕らの足元に倒れた。
「杉っ……」
「お前達も殺せる」
ハリネズミが陰から姿を現し、僕らに名前を呼ばせる暇すら与えずそう言った。
「あーあ、お前らがもう少し遅けりゃ、俺もここから逃げれたんだがな。まぁいいか、一人殺せたし。結果オーライだ」
頭を搔きながら、杉越の周りに散らばる、割れたビー玉を指差した。
「ビー玉に予め『ペン』で針を仕込んで置いて、敵の近くで針を発動させる。針爆弾だ。まだまだある」
ハリネズミが腰に付けたホルダーをじゃらじゃらと鳴らした。さっきも聞いた、ビー玉が擦れる音だ。
「お前らが立っているそこは、既に俺の射程圏内だ。逃げようとすれば、殺す」
「……!」
足元に、杉越を中心にした血溜まりが広がって行く。それが僕の靴に染みた瞬間、まるで死の淵に足をかけたような寒気が、全身を襲った。
そこで、足元から杉越の声がした。
「……こういう遠距離攻撃の方法が有ったのか。読みが外れたな……」
杉越が穴だらけの体で口を動かす。唇が震えるたびに、血の匂いが濃くなる。
「ああ、即死じゃなかったか。精度が低いからな、これは。まぁ、いずれにせよ出血多量で死ぬだろ」
まだ、息がある。杉越は生きている。声を出せるという事は、おそらく肺にも喉にも絶望的なダメージは負っていないはずだ。止血すれば、まだ助かるかもしれない。
そのためには、どうする。あの針爆弾。ハリネズミの言う通り、この間合いで避けたりするのは困難だろう。せめて、後一歩後ろに居れば。
数秒前の自分を嫌悪する。何が後ずさるな。だ。
昨日みたいにハッタリでどうにかするか?幸い僕の『道具』の詳細はバレていない。
けど、行けるか?二回連続で、こんな奴相手に。
「面白いなぁ」
ハリネズミが、僕の顔を見て、微笑んだ。
「その顔、これからどうするか必死に考えてんだろ?面白い。死にそうな人間を見るのは心底面白い。そのためにこの『ペン』を契約したんだ。好きな時間に好きな場所を刺せるこの『ペン』は、『死にそうな人間』を作るのに最適だ」
犯罪者の言葉に、腸が煮えくり返りそうになる。義憤と呼べる物が、僕の中にあった。
「ああ、どうせならこいつももう少し生かせて置けばよかったな。そうすりゃ、一度に四人も楽しめたのに」
蹴られた首が、ゴロゴロと床を回る。あの首はもう繋がっていないのだと、更に意識させられた。
「ま、仕方ねぇよな。『憑き札』を使い切ったし、さっきみたいなへまは困るし……ああ、いや、そういう話がしたいんじゃなかった。お前らと交渉したいんだ」
「……交渉?」
「ああ、昨日とは逆だ。いや、昨日と一緒か。この交渉に乗ってくれるんなら、お前らをここから逃がしてやる。おい、パーベ」
ハリネズミがそう言うと、ハリネズミが付けていたイヤリングが波打ち、一人の少年へと姿を変え、床に立った。
「パーベ。あいつら三人の内、二人が契約者なんだよな?」
「うん。『道具』と『悪魔』の気配が二つずつする。僕と君の『ペン』を除いて」
ハリネズミはその返答に頷き、口を開いた。
「さて、要求する。お前らも『悪魔』を出せ。そして『道具』の説明をしろ。そして、その『道具』を俺に渡せ」
……つまり、それは。
「お前らは俺に抗う術が無くなるが、生きてここを出られるし、俺は更に楽しみやすくなる。『憑き札』より便利な『道具』だったら嬉しいな」
最悪だ。こいつの交渉に乗る訳にはいかない。
……関ヶ原は僕の後ろに居る。さっきの杉越のように僕が盾になれば関ヶ原に針爆弾は着弾しないだろう。こうなれば、『鍵』を関ヶ原に託して、関ヶ原だけでも……。
「じゃあ、僕から行こうか」
僕が考えている間に、杉越が倒れたまま腕時計を外し、床に置いた。
「説明してやれ。ララ」
「はぁい」
杉越のポケットから、間延びした声と共に踊り子が現れる。さっき見た、ララという悪魔だ。
その悪魔が、腕時計の解説を始めた。僕も初めて聞く。
「この腕時計の名前は、『
説明を聞いたハリネズミの顔色が変わった。それを見て、杉越が血の匂いと共に責める。
「断言する。僕のこの『時計』と、無傷の二人が居れば、お前を殺せる」
それは、体に幾数もの穴ができているとは思えないほど、芯の通った声だった。
「針爆弾とやらは着弾する前に払えばいい。上着一枚でほとんど無効化できる。それから二人同時に接近戦、しかもその内一回、僕が一人の傷を『巻き戻す』。それでも対処できるか、ハリネズミ」
後ろに居る関ヶ原がナイフを構え、殺し合う意思を見せた。
「……ララとかいう悪魔。そいつが言っていた作戦は、本当に実行可能か?」
「ええ、噓は吐いてないわよぉ」
悪魔は噓をつかない。その事を、この場に居る全員が知っている。
悪魔が実行可能だと言えば、それは絶対に実行可能なのだ。
「ただ、そうすると、能力を使えるのは二十四時間に一回までだから、少なくとも僕ともう一人が死ぬ。いや、高確率で全滅、相討ちだろう。そこでお前と交渉したい」
杉越が、倒れたままで不敵に笑う。
「要求する。僕らを見逃せ。そうしたらお前を見逃してあげよう」
ハリネズミの顔から、微笑みが消える。
「おや、さっきまでの笑顔はどうした?鏡を持って来てあげようか。今なら一度に四人楽しめるよ」
杉越が更に煽る。ハリネズミは瞼をピクリと震わせた後、溜息をつくように口を開いた。
「……割に合わないな。俺が得られるのは俺一人なのに、お前らは三人だ。上乗せしろ……そうだな、お前の『道具』も説明してもらおうか」
ハリネズミが、『ペン』で僕を指差した。
「遥。言う必要はないよ」
杉越が足元から僕の口を見る。
「んん?それじゃあ、見逃してやろうという気にはならねぇな」
ハリネズミがぎらついた目で僕をねめつける。
「10」
杉越は、ハリネズミの言葉にカウントダウンで答えた。
「おいおい、引き際って物を考えろよ」
「9、8、7」
杉越はカウントダウンをやめない。
「6、5、4」
ハリネズミが、腰のホルダー。針爆弾に手を伸ばす。
「3、2、1……」
「『支配鍵』」
手のひらから『鍵』を取り出し、掲げてみせる。
耐えられなかった。
「あらゆる錠の開閉を、この『鍵』で触れる事で自由にできる。僕は真実を言っている、そうだな?ガガ」
指輪が変化し、ガガが人型になって答える。
「はい。今の言葉は全て真実です」
ハリネズミは構えた手を下ろし、杉越がカウントダウンを辞めた。
「ふーん……どうやって倉庫とここの鍵を開けたのか不思議だったが、まんまそういう能力だったんだな。便利そうだし、厄介だ」
冷えた視線が、手のひらに突き刺さる。
「交渉成立だ。情報ありがとう。お前らは必ず殺す」
そう言って、ハリネズミは裏口から出て行き、僕らの目の前から姿を消した。
「……『左過時計』」
それを確認した杉越が、『道具』使った。腕の時計が逆向きにギュルギュルと回る。床に流れた血が、杉越の傷穴に流れて行き、塞いでいった。『対象の時を巻き戻す』。やはり本物だったようだ。
「よっこいしょ」
時を巻き戻し終えた杉越が立ち上がる。僕は逆に、昨日のようにその場にへたり込んでしまった。
あいつが居なくなった事、血の匂いが薄くなった事、体を吊り上げていた緊張という名の糸が、なくなった。
「戻れ、ララ」
「……戻れ、ガガ」
杉越の命令でララがストラップに変化し、ポケットへ収納される。僕も真似して、ガガを指輪に直した。
そして、へたり込んだまま、先程『鍵』を取り出した事を謝る。
「……悪い」
「別に。二つの例が既にバレていたし、僕が君の『道具』を戦力扱いしなかった事で、大方どんな能力かはバレていただろうしね。それにその『鍵』の他の能力まではバレていない。気にしなくていいよ」
「……そうか」
脳内でざりざりという音が鳴る。体に詰められていた砂が、安堵と不安と混じって、体から出ていくようだった。
・・・・・・
「あいつのDNAが取れそうな物を探そう。と言っても、あまり離れ過ぎるのは危険だからできないけど」
そう言って僕らはハリネズミの家を練り歩いた。
「周りの住民に聞くとかじゃ駄目なのか」
「あいつらは基本的に夜しか家を出なかったようだし、あんまり有益な情報は出て来ないんじゃないかな。僕らがここに居た事がバレるのもまずいし」
「DNAとか取って、何か有益な情報になるか?」
「ないよりはマシだろう?」
杉越がリビング中央に転がる死体を眺めた。
「本当ならこいつに『左過時計』を使って針野郎の情報を引き出したかったが……流石に僕の命の方が大事だろう。ねぇ?」
杉越が僕に同意を促す。
「そうだな。情報よりお前の『左過時計』の方が大事だ」
「あれ?思ってた答えと違う」
関ヶ原が色々無視して廊下を指差す。
「洗面所とかどうかしら。抜け毛とか、歯ブラシとか……」
「よし、行こう」
廊下の扉を片っ端から開け、洗面所を探し当てる。
関ヶ原が歯ブラシ立てに入っていた二本を引っこ抜き、杉越が床にうずくまり毛髪を探した。テキパキしている。
……二人共、タフだ。先程命をやりとりをしたばかりだと言うのに。
若干呆れながらも、僕も感情のスイッチを切り替える。情報で相手を上回る事は大切だ。ただでさえ僕ら二人の道具を悪魔に語らせてしまったのだから。
「でも、どっちのか分からないな」
歯ブラシは二本有った。おそらく『憑き札』使いの男とハリネズミの二人でこの家に住んでいたのだろう。これではどちらがどちらの歯ブラシか分からない。抜け毛も同様だ。
「それは大丈夫。この血と別の反応を示した方が、ハリネズミのDNAだ」
杉越が先程『憑き札』使いの断面から採った血を僕に見せる。……これではどっちが『吸血鬼』か分からない。
「そうね」
関ヶ原がごく普通に返す。
僕はもう正直、赤黒い血を見るとさっきの穴だらけの杉越がフラッシュバックして肝が冷えてしょうがないのだが、この二人にはそういった気配は見て取れない。
この二人はやっぱり、どこかネジがぶっ飛んでるんだなと改めて思った。
「……というか、そのDNAどうするんだ?僕達がここに居たのバレたら、まずいんだろ」
不法侵入した家で殺人事件がありました。なんて、めちゃくちゃ怪しまれるに決まっている。
取り調べで身柄を拘束されるのも厄介だし、最悪、僕ら自身が犯人扱いされる可能性すらある。濡れ衣を晴らすために濡れ衣を増やすなんて本末転倒だ。
「うーん、まぁ、身内に頼む事になるかな」
「身内。って……」
「大丈夫、大丈夫。口が固い人を選ぶから」
どうやらこいつが持つコネクションは、海の上に建つカフェ一軒にとどまらないようだ。計り知れない。
「こんな所かしら」
結局、洗面所に限らず家を隈なく探索した後。関ヶ原が歯ブラシやら毛髪やら血やらを個別にまとめた袋を掲げた。
「日記とか有れば、もう少しプロファイリングが進んだんだけど……」
家の中には、必要最低限の物しかなかった。それはそれで不気味で個性的ではあったけれど、余り有益な情報とはならなかった。
「うーん……」
杉越が考え込む。
「どうした?」
「不思議な事が、二つある」
そう言って、杉越がリビングを指差した。
「あいつ以外の死体がない」
「いや……そりゃ、何体も転がってる訳ないだろ」
「覚えてないのかい、遥。『神隠し』は今までに九人の人間を攫ってるんだ」
杉越が天井を見る。
「その理由は多分……さっきあいつが言ってた通り、『死にそうな目に合わせて楽しむため』だと思う。その死にそうな目に合った人間がどうなったかは知らないけど……行方不明として扱われている限りこの家に居ると思ったんだけどね。隠し扉みたいな物もなかったし」
確かに、あの公園の倉庫には織川加奈、一人しか居なかった。他にああいう倉庫が何個もあるとは思えない。
「……つまり、それってどういう事なの?」
関ヶ原の問いに杉越が答える。
「この家に居なかったという事は、多分、『人間を隠せる』道具をもった契約者が、『神隠し』サイドに居る」
何となく予想はしていたが、やはり居るのか、三人目。
「例えば?」
「その三人目がこの家に居なかった事を考えると……僕らがここに来るのを読んで先に逃がした、戦力に数えられないような『道具』だろうね。ララ、どういうのがあるかな」
今度は杉越の問いにララが答える。
「うぅん、『塗った物を透明にするペンキ』とか、『際限なく物を入れられるバッグ』とかかしらぁ?後者は生き物には使えないんだけど」
「高確率で死体にしているだろうから、後者も十分ありえると思うよ」
杉越がまたさらりと恐ろしい事を言う。しかし、真実なのだろう。だから恐ろしい。
「っていうか、どっかに死体が何体も転がってると思ってこの家探索してたのか」
「うん。それより、ガガさんは何か知らない?『人を隠せる道具』」
杉越が僕の言葉を軽く無視して、ガガに尋ねる。ガガは許可を求めるように僕に視線を向けた。『僕以外の質問には答えるな』という僕の命令を破ろうとしているのだろう。
「……いいよ。答えてやれ」
「はい、では答えさせていただきますが、答えはノーです。特に思い当たりません」
「……ふむ、そうか。ありがとう」
許可した
どちらにせよ、誰も知らない『道具』である可能性があるのだから、予め道具の予想を建てておくというのは気休め程度にしかならないだろう。下手な予想は混乱を招きかねないし。
「それで?不思議な事の二つ目はなんだ?」
「『憑き札』使いの死因。あの『ペン』による針じゃない。ただ首を切られている……何故僕みたいに串刺しにしなかったのか」
「……僕達に針爆弾を悟らせないためじゃないか?もしこいつが穴だらけになって死んでたら、僕達も何か気付いてたかも知れない」
実際、あいつの針爆弾を看破し、一日一回の『左過時計』を残したままさっきの交渉を終えれば、こいつを生き返らせ、情報を引き出せたのだ。
「『憑き札』を使い切った丸腰のこいつなら、『ペン』を使わずに殺せたんだろう」
「うーん……それにしても、切り口が真っ直ぐすぎるというか……」
杉越が首の断面を覗き込む。僕は見るに耐えなくて目を逸らした。
「まぁ、いいか。これ以上ここに居ても新しい情報はなさそうだ。今日はもう帰ろう」
杉越が廊下を振り返り、家から出る。僕と関ヶ原も一緒に付いていく。
外に出て空を見上げる。空はほとんど夜に移り変わっていたが、街の端にまだほんの少しだけ夕焼けの赤みが残っていた。
何だか、こうやって視界に空が映る事が、随分久しぶりに思えた。
空気も一気に軽くなった気がする。さっきまで死の淵に居たのだと何度も意識させられる。
ただ、それ以上に生還した安堵と度重なる疲労から、足が震えた。
「おや、お疲れだね。遥」
杉越が見透かしたように笑う。今度はあいつの言う通り、本当にお疲れだ。
「今度は私がおんぶしてあげましょうか」
関ヶ原が、腰の後ろに両手を持っていき、僕に背中を見せた。
「……いいよ別に。お断りだ」
そうして、煮え切らない夜空の下、僕ら三人は仲良く帰り道を歩いた。行きとは違い、普通の歩き方で。
行先は杉越が住んでいるマンションだ。しばらくはあそこに泊まる事になるだろう。少なくとも、ハリネズミをどうにかするまでは。単独行動は危険すぎる。
「ああ、そういえば、もう一つ不思議な事があった」
杉越が歩きながら、手のひらをポンと叩くジェスチャーをした。
「これは別に、今日からじゃなく、昨日から不思議だったんだけどね」
「なんだよ」
「倉庫の少女が、何故あそこに監禁されてるのかって事」
……その情報をどこで、と考えた所で、僕は指輪のガガを見た。
「……そんな事まで説明してたのかお前」
「はい」
指輪から短い返事が返ってくる。あの時点で僕の境遇はほぼ杉越に伝わっていたようだ。僕のトイレはそんなに長かっただろうか。
「どうだい?あれからその娘に会いに行った?何か分かった?」
どうせ、関ヶ原にはもう説明した事だし、そうでなくとも今更隠す必要もない。僕はそのまま答えた。
「名前は織川加奈。年齢は僕らの三つ下くらいだった……お前の場合はもっと下だが」
「ん?僕も君と同じ学年だけど?」
杉越がとぼけた顔をする。僕は何も言及しなかった。
「犯人について色々聞こうと思ったが、何も喋らず、僕を犯人扱いした。真犯人を庇うような感じだった」
「ふーん……結局その娘だけ倉庫に監禁されてる理由は分からない、か。謎が謎を呼ぶね」
だと言うのに、僕らの『道具』の能力とメンバーの情報は全て割れている。多分、『憑き札』から逃げている時に杉越のマンションもバレた。
相手の『三人目』の道具次第では、とても不利だ。
「まぁ、作戦会議は秘密基地……じゃなくて、アジトでやろう」
そう言って杉越はマンションのエントランスを開けた。僕らの秘密基地はあのカフェで、このマンションの部屋はアジトらしい。
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