第40話 補習 その4
「せんせー、服が汚れちゃいますから。立ってください」
「失礼しました、
しかし早かったのは
「確かに知らない仲ではありませんし、真野先生の体に免じて柚原さんを折って畳んで裏返すのは延期にします」
「ありがとう、
「どういたしまして」
視線がねっとりと絡みます。ただならぬ因縁の気配が漂います。果たしてこの二人の過去にはどんな愛憎劇があったのでしょう。私、気になりません。
ですが学級委員長として責任感の強い柚原さんは、先生の事情もなおざりにはしません。ぐいぐいと間に割って入っていきます。
「ちょーっといいですかー。さつき先生と二子先輩ってー、どういう関係なんですかー」
「関係って、そんな……他の人に簡単に説明できるようなことではないです」
「私が中等部生だった頃の教師と生徒で、今は妹の担任としてお世話になっている先生よ。それ以外にどんな禁断の事情があるっていうのかしら」
「質問してるのはこっちです。わざと思わせぶりにするのとかやめてくれますか」
楽しく話が弾んでいるようです。私もニコちゃんとお布団の中で楽しく弾み合いたいと思います。
盛り上がっている三人のご健勝を祈りつつ、今度こそ上手に忍び足です。
「どこまでも懲りない娘ね。私がニコに取り付く害虫を見逃すはずないでしょう?」
私のデリケートゾーンを狙い百合の爪が繰り出されます。
「あっ、ふぅ……んんっ」
ひとたび技がキマってしまえばもはや抗う術はありません。一子ちゃんに奏でられるがまま、はしたなく鳴き続ける肉楽器と堕すのが習いです。
ですが本来清浄な私は淫欲の罠には嵌まりません。変わり身の術は見事成功、一子ちゃんとさつき先生が旧交を温める様を微笑ましく見守ります。
「ああっ、さつき先生が大変なことに! ちょっと二子先輩なんてことしてるんですか! で、でも先生のいじらしい声が聞けるしな……それにあんな切なそうな顔をして……もっと乱れたらどうなるのかな……てっ、駄目です先輩、ここ学校ですからっていうか学校じゃなくてもだめぇー!」
愛と愁いに満ちた葛藤のすえ、柚原さんが敢然と突撃します。レッツ3Pです。
「こらそこ!
「ん。ニコ、おねえちゃんにあいにきた」
悶える先生から一子ちゃんを引き剥がそうとしつつ、柚原さんはこちらにも矛先を向けてきます。まずニコちゃんを味方に引き入れるあたりがさすがです。的確に私を無力化したのに続いて、声にドスを利かせて一子ちゃんへ凄みます。
「二子先輩、これ以上中等部で好き勝手するのは許しません。まだ不埒な真似を続けるようなら強硬手段を取りますから」
「やってみたら? 返り討ちにするだけよ。でもそうね、この場は真野先生の**を勃てて、もとい顔を立てて引いてあげる」
「くふんっ」
一子ちゃんが最後に手首を一閃させて離れると、さつき先生は一鳴きして崩れ落ちます。息が荒いです。目が虚ろです。急病かもしれません。お体は大切にしてほしいです。
柚原さんが傍らに佇み、じっとりした視線を注ぎます。
「先生、立ってください」
「力が入らないので、すぐには……ごめんなさい、みっともないですよね。教師失格ですね。人とし存在価値がないですね」
「本当ですよ。見てるこっちの方が恥ずかしくなってきます。生徒にちょっと弄られたぐらいではぁはぁするなんてあり得ないです。いやらしいです」
「柚原さん? なんだか目がちょっと怖……」
「やっぱり二子先輩がいいんですか? 確かにすっごく綺麗だし、テクニシャンだし、先輩が先生を攻めてるところなんて最高に滾るっていうか動画保存待ったなしですけど」
「いえそこは待って? まさか本当に隠し撮りなんてしてないですよね?」
「だけどわたしだって負けませんよ。見境なく女の子に手を出す先輩なんかより、わたしの方がずっと気持ち良くしてみせますから」
「冤罪だわ。私がいつそんな淫魔みたいな真似をしたっていうのかしら」
一子ちゃんが不服そうに指をわきわきさせますが、柚原さんの視界にはもうさつき先生しか入っていない模様です。
「だからいいですよね先生、わたしと……」
「柚原さん、冷静になって? 私なんかを相手にしたって人生の汚点になるだけですよ?」
「平気です、先生となら汚れたって……だから、だから、さっさと言うことを聞けえー!」
「
「今忙しいからあとで!」
「史恵」
「うるさい、今いいところなんだから邪魔しないで!」
「ぴん」
ニコちゃんの指先が柚原さんのおでこを弾きます。途端、柚原さんは雷にでも打たれたみたいに硬直します。
「はっ……わたしはいったい何を?」
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