巨塔
岸本何某
第1話
一体全体、誰が予測できた事だろう。
ポーカーをやれば真顔で完勝し勝ち誇る……素数が解らぬと言えば嫌な顔一つせずに教えてくれる……思い起こせば限りない……。
彼は良いヤツだった。
それが今では……。
あの二の巨塔を見よ!
あれが彼である。劇的な死を迎えた私の無二の友人である!
義務教育を修了した折に今迄の自分と決別せんと、バンジージャンプを試みた彼はそのまま地面にぶっ刺さり、以来帰っては来なかった。
二本の脚だけが地表に突き出し、夏の陽射しを照り返している……やがてそれらは大きくなり、天を衝く巨塔となった。
「馬鹿野郎」
私はそう言ったが、巨塔は何も返さない。
何となく勝ち誇っている様にも見えて、とても腹が立った。
巨塔 岸本何某 @Volex
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