神無月の七海3

 恵比寿桂一の母は南の離れ小島出身で、島の神事を司る神人かみんちゅ

 そして恵比寿自身類い希な霊力を持ち、恵比寿天の生まれ変わりとも、恵比寿天の守護を受けているとも言われる。

 父親は有名大企業の二代目という恵まれた家庭、母親謙りの美しい容姿で常に微笑みを絶やさず、頭脳明晰で仕事の出来る完璧な人間だった。

 魅力溢れるカリスマ性で、周りに集う並外れた美女に才女、美魔女も美老女も恵比寿に夢中だ。

 しかし今、恵比寿の目の前に居るのは、素材は良いのに手抜きメイクと洗いざらしの髪、お人好しで金にだらしなく、ズボラで人の言うことを聞かない貧困フリーター女子。

 彼女は神を捉え、遙か彼方まで霊視をして魂を探しだし、第三の眼で真実を見極める稀代の巫女。

 恵比寿の容姿も肩書きも一切無視するのに、作った料理は遠慮なく食べる天願七海は、人として危うい性格と桁外れの神秘性を持つ。

 恵比寿にとって彼女は、常に騒動を起こす目の離せない存在だ。

 



「天願さん、僕は君と知り合って半年近く、ほぼ毎日家に通っている。それでも関係ないというのか」

「だって恵比寿さんは小さいおじさん目当てで、私とはライバル関係よ」

「僕が大黒天様に願ったのは真琴の声を取り戻すこと。そして僕の願いを叶え、真琴を救ってくれたのは君だ。君は僕の敵じゃない、恩人だ」


 恵比寿青年の顔から七海の嫌いなアルカイックスマイルが消え、真剣な眼差しで少し怒ったような素の表情になる。

 いつも自分のことで精一杯、本当に恵比寿青年が心配しているのだと気付かなかった。


「恵比寿さん、私どうしたらいいの。家が雨漏りを直すお金が必要なのに、パンダに押し潰されて働きに行けない」


 真琴の忠告通り、今は恵比寿青年に頼ろう。

 頑なだった七海の心が、ほどけてゆく。 


「やっと、僕や大黒天様の声が君に届いた。しかしこれ以上のWワークは体力的に無理だ」

「でも私、早朝バイトは辞めたくないの」

「君が今取り組むべき課題は、家の雨漏りを直すための業者選定だ。僕の見立てでは、雨漏りを直すのに外壁の修繕は必要ない」


 今回の騒動は、怪しいリフォーム会社に高額の修繕費をふっかけられて、その金を稼ぐためにバイトを増やして過労で倒れたのが原因だ。

 

「確かに工事費が安ければ、無理してお金を稼ぐ必要はないけど……」

「明日のディスカウントストアバイトは休みだから、僕の知り合いの業者に屋根の状態を見てもらう」

「えっ、明日はダメ。靴のかかとがすり減って穴が開きそうだから、靴を買いに行く予定なの」

「君は屋根の穴と靴の穴、どちらが重要なんだ」

「それに雨漏りした私の部屋、もの凄く散らかっていて、業者の人を部屋に入れたくない」

「やたらと君がリフォーム業者を避けていた理由はそれか。現場を見せないと雨漏り修理は出来ないぞ。こうなった明日は僕も現場に立ち会う」

「立ち会うって、恵比寿さん、私の部屋に入るつもり!!」

「僕が最初に見たゴミ溜め玄関と比べたら、君の汚部屋なんて大したことない」


 今更なんだと恵比寿青年に言われ、七海はぐうの音も出ない。


「ああ面倒くさい。リフォーム業者が来る前に部屋を片付けないといけないし、せっかくの休日が潰れるよ」

「恵比寿よ、ワシも娘の部屋に入って良いか?」

「天願さんの部屋はかなり散らかっているらしいので、部屋の浄化を終えたら大黒天様をお招きします」


「何だ、つまらんのう」とぼやきながら、酔っ払った小さいおじさんはテーブルの上を千鳥足で歩く。

 七海は小さいおじさんを捕まえようと手を伸ばすが、スルリと避けられた。


「小さいおじさんの動きが早い、まるで映画の酔っ払いカンフー達人みたい」

「そろそろ神無月も終わりだから、ワシも力を取り戻すぞぉ」


 酔った小さいおじさんは七海をからかうように怪しいおどりを踊り、それを見た恵比寿青年は目を爛々と輝かせながら素早くスマホ動画を撮影する。


「大黒天様、見事なステップです。これぞ神々の舞い!!」


 さっきまでの深刻な雰囲気が消し飛んで、恵比寿青年はいつものように小さいおじさんとイチャイチャしている。

 七海はやれやれとため息をつきながら椅子に腰掛け、目の前にあった茶色い液体を一気に飲み干す。

 ウーロン茶と思って飲んだ液体は、濃厚なアルコールの香りがして、喉が焼けたように痛い。


「うわっ、これってウイスキー? かなり強烈だけどトロリと濃厚な飲み口で、芳醇な香りで凄く美味しい。恵比寿さん、もう一杯ちょうだい」

「アルコール45度をストレートで一気飲みって、早く水を飲め!!」

「私そのままで飲むの。水で薄めるなんてもったいないっ」

「いいぞいいぞ、娘は格好いける口だな。今夜は恵比寿のおごりで飲み明かそう」


 七海は顔を真っ赤にして恵比寿青年を睨みつけ、小さいおじさんはウイスキーのボトルの周囲で踊っている。

 恵比寿青年は七海からグラスを取り上げようとして、背後から物音がした。


「うわぁ、何だあれ。テーブルの上に小人がいるぅ!!」


 個室の入り口に料理を運んできた男性店員が立っていて、テーブルの上で踊る小さいおじさんを凝視する。


「君はまさか、大黒天様の姿が見えるのか?」


 恵比寿青年は慌てて小さいおじさんを隠そうとするが、大黒天の体は手のひらを擦りぬけて捕らえられない。

 男性店員は直立不動で硬直したまま、目だけが小さいおじさんの姿を追っている。


「この店に大黒天様を視る者がいるとは、マズいことになった。天願さん、大黒天様を捕まえてくれ」

「エヘヘッ、小さいおじさんの踊り、おもしろーい」

「完全に酔っているな。それじゃあ君の手を貸してもらうぞ」


 恵比寿青年はウイスキーのボトルを七海の手前に置いて、小さいおじさんを誘導する。

 そして七海の背後から覆い被さるように長い腕を伸ばし手の甲に重ねて、二人羽織の要領で小さいおじさんを捕まえる。

 七海はいきなり背後から抱きしめられた形になる。


「ちょっと恵比寿さん、重たいからもたれないで」

「君は、今の状況が分かっていない。頼むから天願さん、大黒天様を隠してくれ」

「きゃあぁっ、イケメン社長さんが、七海さんを抱きしめているっ」


 男性店員の大声を聞きつけてやってきたぽっちゃりバイト女子は、キャアキャア騒ぐ。

 酔いから醒めた七海は、慌てて小さいおじさんをエプロンのポケットに隠すと、見覚えのない男性店員を見て首をかしげた。

 

「もしかして七海さん、彼と同じシフト初めてですか? 私の彼氏、先週から従業員として働いているの」

「あなたの彼氏って、あっ、思い出した。確か自販機で小さいおじさんを見たって騒いで、店に飛び込んできたことのある……」


 居酒屋の新人男性店員は、以前小さいおじさんを発見したことのある、ぽっちゃり女子の彼氏だった。


「大変だ、この人小さいおじさんが見えている。私が小さいおじさんを連れているのがバレちゃう!!」

「大変だ、ワシがこっそり美味しいまかないを食べているのもバレてしまう」

「大丈夫です大黒天様。相手は多少霊力のあるだけの一般人、僕がなんとかします」 


 恵比寿青年は立ち上がると、野次馬根性丸出しのぽっちゃり女子と直立不動状態の彼氏に近づく。


「驚かせてすみません、料理はここで受け取ります。僕は天願さんに込み入った話があるので、しばらく二人っきりにしてくださいと店長に伝えてください」


 酒に酔って赤ら顔の七海と、テーブルの上に置かれた小さい花束。

 そして真剣なまなざしの恵比寿青年を見てぽっちゃり女子は瞳を輝かせる。


「毎日七海さんの家に通う恵比寿社長さんが込み入った話って……もしかして、プ、プロポーズとか」

「ちょっと待ってくれ。俺さっきテーブルの上で、小さいおじさんを見た!!」


 焦って声の大きくなる男性店員の声を無視して、ぽっちゃり女子は質問攻めにする。


「社長さん、シャンパンとかケーキとか用意しますか?」

「今日は彼女に僕の気持ちを伝えるだけだから、あまり大げさにしたくない」

「キャア、社長さん、応援してます。ふたりでじっくり話し合ってください」

「あのう、俺の話も聞いてくれ。今そこに小さいおじさんがいて……」

「もう、アンタの小さいおじさんの話は聞き飽きた。それより私たちの将来について少しは考えてよ」 


 話を完全に無視された新人店員は、ぽっちゃり女子に引きずられるように個室を後にする。

 

「ふぅ、なんとか適当にごまかせた」

「ちょっと恵比寿さん、全然適当にごまかせてない。この花束とか恵比寿さんの思わせぶりな言葉とか、絶対に勘違いしたよ」

「そうだ、彼女は僕が天願さんにプロポーズすると勘違いしただろう」

「ひいいっ、プロポーズ!?}


 両手を頬に当てムンクの叫びみたいな顔をする七海を見て、恵比寿青年はしてやったりと満面の笑みを浮かべる。


「僕が毎日君の家に通っているのも、込み入った話をするのも本当のこと。その噂が流れたら「返事は保留している」と答えればいい」

「恵比寿さんは否定する気ないの? 超一流企業のセレブ若社長にプロポーズされたなんて噂になったら大変よ!!」

「僕はこれまで君に散々振り回されて、もう野放しにしないと決めた。噂が広まれば悪い虫も寄ってこない」


 これまで七海に見せたアルカイックスマイルとは違う、笑顔にしては執着心がもろに現れた表情。

 恵比寿青年はさわやかな外見をしているが、かなりストーカー気質だ。

 これまで興味の対象は小さいおじさんだったけど、七海自身もターゲットにされたと気づき、背中に冷たい汗が流れる。


「それに大黒天様の姿を見ることのできる店員がいては、居酒屋バイトは続けられないだろう」 


 恵比寿青年は七海にそう告げると、小さいおじさんも隠れていたエプロンのポケットから這い出してくる。


「娘はもう食事に困らないから、そろそろ居酒屋店長を安心させるのだ」

「小さいおじさん、それって居酒屋バイトを辞めろってこと?」

「この店は人手が足りているし、ワシが他人に見つかれば店長に迷惑をかける。それに夜一人っきりで留守番する弁財天は寂しいだろう」


 七海が居酒屋バイトを始めた頃、家の玄関でただいまといっても返事はなかった。

 でも今は、お帰りなさいの声と温かい食事が用意されている。


「私はもう、天涯孤独ではないのね」


 恵比寿青年との話し合いの結果、小さいおじさんが見つかって騒ぎになる前に、七海は居酒屋バイトを辞めることにした。

 その後、恵比寿青年は小さいおじさんを預かると店を出て、七海も酔いが醒めたので仕事に戻る。

 廊下で鉢合わせたぽっちゃり女子は興味津々の表情で、そして後ろにいる彼氏の新人店員は青い顔でこちらを凝視していた。

 

「七海さーん、恵比寿社長との話し合いはどうだった。プロポーズOKしたの?」

「えっと、返事は保留です」

  

 七海は恵比寿青年に言われた通りの返事でぽっちゃり女子の追及をかわすと、厨房にいる店長に話があると告げる。


「なるほど、七海は恵比寿社長に頼まれて親戚の子を預かっているのか。女の子を家に一人夜遅くまで留守番させるのは心配だな」

「それでバイトを続けるのは難しくて、店長にはとてもお世話になったけど……」

「分かった、店の人手は充分足りているから、七海は今日でバイト卒業だ。それにしても身内を預けるなんて、恵比寿社長はよっぽど七海を信頼しているんだな」

「私、恵比寿さんには怒られてばかりです」

「あははっ、怒られるなんて夫婦げんかは犬も食わないぞ。七海、恵比寿社長ほどの優良物件を逃がすなよ」


 居酒屋店長も七海と恵比寿青年の関係を勘違いしているけど、今は否定しないでおこう。

 それから七海は新人店員の疑わしげな視線を感じながら、最後のバイトを終える。

 店の外で店長が車で帰るところを呼び止めると、七海は深々と頭を下げた。 


「店長、今まで本当にありがとうございました。次はお客さんとしてお店に遊びに来ます」

「そうだな、美味い酒と料理を準備して待っている。恵比寿社長と、エプロンのポケットの中の小さいお方も連れて来いよ」

「えっ、小さいお方って、もしかして小さいおじさんが見えていたの?」


 七海は思わず頭を上げる。

 しかし居酒屋店長の乗った車は、すでに走り去った後だった。



 

 バイトを終えて家に帰ると、小さいおじさんは仏間の座布団の上で眠っていた。

 疲労困憊の七海は着替えもせず、小さいおじさんの隣に敷かれたせんべい布団の上に倒れ込む。

 ぽっちゃり女子にプロポーズと勘違いされたけど、恵比寿青年はどこまで本気なのかとか、居酒屋店長も小さいおじさんの姿が見えていたとか、考えることが多すぎて脳がオーバーヒート状態だ。


「とりあえず、全部明日、考えよう。もう限界、おやすみなさい」


 その夜もパンダのモノノケが現れたが、七海は爆睡中でお腹の上に乗っかられても反応がなく、しばらくしてパンダのモノノケは煙のように消えた。




 翌朝、小さいおじさんは普段より早く目を覚ます。

 隣で七海が毛布を蹴飛ばして、イビキをかきながら寝ている。


「昨夜の酒は美味かった。恵比寿に頼んで、あの酒をあんずさんの仏壇にも供えさせよう。それにしてもパンダのモノノケはどこにいる?」


 仏壇に向かって独り言を呟いていた小さいおじさんは、ふと何かを思い出すと、顔色を変えた。


「もしかして、いやまさか……でも、それしか考えられない。ワシの代わりにあんずさんが」

 


 ***


 

「天願さん、いい加減起きてくれないか。あと十分でリフォーム業者が来る」


 気持ちよく爆睡する七海の右肩を、誰かが強く揺さぶりながら声をかける。

 目の前の恵比寿青年はいつものハイブランドスーツではなく、お高そうな濃紺のスポーツウエアを着ていた。


「なんだ恵比寿さん。今日バイト休みだから、もう少し寝かせてよ」

「天願さん、まず目を開けて、体を起こしてくれ」


 恵比寿青年に言われて、七海は自分が目を閉じたままだと気付く。

 重たい目蓋を開くと、昼間のまぶしい日差しが差し込んできた。


「あれっ、私寝ていたの? でも恵比寿さんの姿が見えたよ」

「それは天願さんが無意識に第三の眼を使ったのだろう。いよいよ千里眼に近づいてきたな」

「恵比寿さん、いつもと服装が違うけど、仕事はどうしたの? ああっ、思い出した。屋根の雨漏りを直しにリフォーム業者が来る!!」


 七海は慌てて布団から起き上がると、まるで水の中から上がったように生身の体が重たく感じた。


「僕はさっきから君を何度も起こしたぞ。今日の十時に業者が来る」

「そんなに早くリフォーム業者が来るなんて聞いてない。二階の部屋を片付けるまで待って」

「部屋を片付ける前に、顔を洗って服を着替えてくれ」

 

 恵比寿青年に言われて、七海は改めて自分の姿を確認した。

 昨日、服も着替えず布団に倒れ込んだ七海は、髪はゴワゴワで服はヨレヨレ、化粧も落としていない。

 慌てて洗面所に駆け込んで顔を洗い、ボサボサの髪を梳いていると、玄関先から年配男性の野太い声がした。


「すみません、こちら天願さんのお宅ですか」

「もう業者さんが来ちゃった!!」

 

 慌てて洗面所から飛び出すと、すでに玄関先で恵比寿青年が来客の対応をしていた。

 リフォーム業者は恵比寿青年と話ながら家に上がり、二階へと続く廊下を進む。

 そのふたりの前に七海が立ちふさがった。


「ちょっと待って、今部屋がとても散らかっているの。だからリフォームの下見は午後にしてください」

「天願さん、それは無理だ。業者さんのスケジュールがあるし、僕は午後から会議が入っている」

「奥さん、今日は部屋の雨漏りの確認と屋根のチェックだけで、工事はしませんよ」

「それじゃあ三十分待って、急いで部屋を片付けるわ」

「しかたない、僕は業者の方と十分ほど打ち合わせするから、その間に部屋を片付けなさい」


 恵比寿青年は呆れたように大きなため息をつくと、仏間にリフォーム業者を通し、敷かれていたせんべい布団を抱えて縁側に干すと、座布団を勧めてお茶を出す。

 その慣れた様子に、リフォーム業者は「奥さん、良い旦那さんですね」と七海に声をかけた。

 七海はそれを否定する暇もなくゴミ袋(大)を持って二階の部屋に駆け込む。


「ああ、洗濯した服と着替えた服がゴッチャになっている。机の上のガラクタは全部ゴミ袋に押し込んで、後で選り分けよう」


 仕事が忙しいと部屋の掃除を放置したツケを払うことになる。

 七海は両手で服をかき集めながら、足元のガラクタは拾う時間が無いのでベッドの下に蹴り入れる。

 クローゼットの扉を無理矢理閉めて、ベッドの上の読みかけの本や化粧品は毛布の中に押し込んだ。

 掃除機をかける時間も無い。

 七海の第三の目は、一階の恵比寿青年と業者のおじさんが階段を上がってくる姿が見える。


「天願さん、タイムオーバーだ。部屋に入らせてもらう」

「あと五分、待って待って、部屋に入らないで」


 洋服で両手がふさがった七海は扉が開くのを防げない。

 部屋の中を見た恵比寿青年は一瞬立ちすくみ、リフォーム業者のおじさんは愛想笑いを浮かべながら入ってきた。

 そこは脱ぎ散らかした洋服と読みかけの雑誌、使われていないダイエット器具と埃のかぶった小物雑貨の溢れたズボラ女子の汚部屋。


「最近仕事が忙しくて部屋を片付けられなくて、普段はもう少しマシなんです」

「奥さん、今日は雨漏り箇所をチェックするだけだから、部屋が散らかっていても気にしませんよ」


 仕事で汚部屋を見慣れているらしいリフォーム業者のおじさんは、焦って言い訳する七海にポーカーフェイスで頷くと、天井の状態をチェックする。

 そして恵比寿青年はスマホを片手に、どこかと連絡を取っていた。


「すまない、急用が出来た。午後の会議を明日に変更してくれ。今日は会社に戻らない」

「恵比寿さん、急用ですか? 時間が無いなら帰っていいですよ」

「ああ、そうだ。急用が出来た。大黒天様が住まう屋敷の一部が汚部屋状態なんて、僕は我慢できない。徹底的にこの部屋を掃除する」


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