第6話 動画

浅場直樹は編集部のパソコンでネットを開いた。


「ニラさん、調べ方がアナログなんですよ」


「アナログってなんだよ。俺だってネットとか見れるぞ」


「って調べられてないじゃないですか。ニラさんって、例えばほの『香川警備保障』って会社調べて出ないから、どんどん検索ワード足して立てるだけでしょ。もっと違うワードでも検索しないと。ワード入れる順序、ひっくり返すだけでも、違うの出ますからね。ニラさんって未だにホームレスの情報屋とか囲ってるでしょ」


「ばか、お前。あいつらの機動力、情報網と言ったら、侮れないぞ」


浅場直樹はカチャカチャとマウスやらキーボードを動かしている。パソコンの画面から目を離さずに浅場直樹は言う。


「何言ってんですか。今じゃホームレスだってスマホ持ってる時代ですよ。あの人たち、ニラさんから金貰って、張込みやら情報仕入れたフリして、大概の情報はネットで簡単に仕入れてますよ」


「ホームレスがスマホ持ってるわけねえだろ」


浅場直樹はパソコンの手を止め、振り返り偉そうな顔で見上げてきた。


「ニラさん。今じゃ、どこでもフリーWi-Fi飛んでますし、電話だってLINEで無料じゃないですか。スマホなんてリサイクルショップで安く売ってますし、充電なんてどこでもできるでしょ。ホームレスだって、日雇いの仕事なんか、アプリで探してますよ」


「そんなになってんのか、今は」


浅場直樹はまた、パソコンに目を向け、カチャカチャ始めた。


「まあ、全部が全部、ネットで調べるだけじゃダメなんで、僕らだって現場で聞き込みとかしますよ。でもニラさんが若い頃とは全然違うと思います」


パソコンでエンターキーをパンッと鳴らし、俺に向かって、どうぞ、と画面を指した。


そこには香川警備保障と思われるビルにトラックが突っ込んでいる動画が流れていた。スマホで撮ったものか、夜の暗がりの中、画像は鮮明ではない。


「こういうね、ツイッターとかフェイスブックとかに動画あげてる奴いるんですよ」


それは20秒くらいの動画だった。動画の始まりは既にトラックが突っ込んだ後で、警報器のサイレン音や、野次馬の「やべえ」とか悲鳴とかが音が割れている状態で流れている。

トラックはサイドに開くウイング式のもので、ウイングパネルが開いたが、なにか故障しているのか途中までしか開かない。その隙間から、ゾロゾロと人が駆け足で出てきた。

棒状のようなものを持っている者、でかい筒のようなものを抱えている者が出てきた。


「なんだこれ。ヤクザのカチコミかなんかか?」


動画は流れている。

車椅子に乗った者まで降りてきた。中には子供、しかも女の子まで降りてきた。


「なんだこりゃ」


動画は20秒きっかりで止まった。


「さあ、なんでしょうね」


浅場直樹も興味を持ったのか、もう1度再生し、食い入るように画面を眺めた。


「なんか、ヤバイの出てきちゃいました?あと、もし、もっと調べたければ、俺の幼馴染で中1の頃から引き篭もりやってる奴が、ちょっとパソコン詳しい奴いますけど」


「詳しいって?」


「まあ、ちょっとダメなやつとか。入っちゃダメなやつ見れちゃうというか」


「それ、法律違反なやつじゃねえのか」


「まあ、アウトっすね」


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