パネル 1 〜香川警備保障

第5話 まず、はじめに

まずは香川警備保障だ。

たまたま、安城流星を尾行して見つけたビルだったが、やはりレコーディングスタジオができる前は香川警備保障という警備会社だったことがわかった。そのビルを管理する不動産会社に出向き、確かに前の利用者は香川という警備会社だと記録されていた。

自動車の脇見運転の事故でエントランスを壊されたので、補修工事を入れ、引き渡された。


「エントランスの補修代はかなりの高額で、あまり経営状態が良くなかったのか、会社を継続するのが難しかったんですかねえ」


不動産会社の担当者はぶっきら棒に答えた。たくさんのファイルを広げては積み重ねて入るが、ほとんど見ている様子はない。仕事をしているフリをしているだけだ。たぶん帰ってほしいのだろう。迷惑そうな顔をしていた。


「次の借り手の芸能事務所には、すぐ決まったんでしょうか?」


開いていたファイルを、わざとらしく大きい音を出して閉じた。


「あの、もういいですか。次のアポ入ってるんですけど」


担当者のわざとらしい態度はまだ続いている。デスクの上は元々汚いくせに、急に整頓し出したり、ファイルをバックに入れたり出したり、芝居がヘタクソだ。もうホント、すぐに出なきゃならないんで、と担当者はバックを持って立ち上がった。最後にバックに入れたのはJALのグアムサイパンのパンフレットだったことを気付かないフリをしてあげた。


「申し訳ありません。最後に1ついいですか?」


何ですか、肩にかけたバックをデスクに下ろして、担当者は不機嫌な顔を作った。


「香川警備保障の社長、香川義信さんの連絡先を教えてもらえないでしょうか」


担当者は、とても不機嫌そうだ。


「今のご時世、やれ個人情報だってうるさいのに教えられるか!って言っても、こっちも連絡取れないんだよ、渡さなきゃいけない書類とかあるし、返さなきゃいけないものもあるし。息子に連絡したって、なんにも取り合っちゃくれない!」


俺は不動産会社を後にした。

俺は浅場直樹に電話をした。


「なんですか?」


「直樹、調べてもらいたいことあるんだけど。会社名と過去に在籍していた社員とか調べられるか?」


「うわぁ、ニラさん。やっちゃってますね。編集長に嫌われますよ」

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