Case 1ー3 幼馴染
少しばかり風でノイズのかかったその言葉はとてもじゃないけど信じられるものではなくてついに俺の幼馴染は頭がおかしくなったのだろうかなんて思っていたところこいつはすでにいつも通りの無邪気な笑みを浮かべていて先程までの異様なまでの虚無感は消えていた。
「入ってみよっか」
気がつけば燐は館の扉に手をかけてこちらをみて笑っていた。
遅いよ、何してるの、って。
いつも通りだった。
『修斗も燐も警戒心ってものがないの?』
不意に耳を撫でた声に思わず振り返る。
何もなかった。
否、何もいなかった。そこには誰もいなく、ただただ広い森林の空間が広がってるだけで誰かがそんなところにいるわけがなかった。
「燐、今何か言った?」
凛の声ではなかった。
それに俺の後方から聞こえた声が俺の前方にいる燐から発せられたわけがない。
それでも何か確証的なものがその声に欲しくて思わずそう問いかける。
返事は予想通りだったが。
「何言ってんの?何もいってないよ」
「そっか、、まぁいいや、入るんだろ?」
「そのために来たんだしね」
ケラケラと笑う幼馴染の後ろに立てば行くよ、そういって燐が扉を開ける。
まるでカフェか何かのようなカランコロンという音が鳴る。
中は古ぼけた喫茶店というのが近いだろうか、カウンターの奥には器具やコーヒー豆などが置かれていて上の方には酒が並べられている。
床は埃が被っていて俺たちが歩くと軽く足元を舞っている。
「ボロい」
「ボロいね」
口を揃えて思わず出た感想はあまりにも失礼なものだったが実際ボロいのだから仕方ないだろう。
「いきなり来て失礼な人たちですね」
いつからそこにいたのか
いつから来ていたのか
そもそも”そこにいるのか”
青年はそこに存在していた。
そして微笑みを浮かべて口をひらく
「”貴方は誰の記憶を望みますか?”」
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