第14話 合流

 PM00:24

 ナビゲーションに従い走った僕は、姉こと後藤長官、夕紙さんの二人と無事合流する事が出来た。

 勿論電話連絡して待ち合わせしてね。

 今は三人でスーパードラッグセンターナカマルの駐車場に居る。


 無事合流したんだけど合流した時の一発目の挨拶で―――


「やぁ、姉さん。久しぶりだね」

「相変わらず元気そうね」

「えぇえええ~~~~~!きょ姉弟!!」


 ―――――と言うやり取りがあった。


 公に姉弟と言う事は言っていない。

 別に隠してるわけでも無いんだけど。

 性が違うのは姉さんが結婚したからであり其処に深い意味はない。

 それでも長官の弟と言うのがインパクトがあったのか夕紙さんは5分ほど僕に対して敬語になっていた。


 ちなみに、僕も姉さんも特区管理局本部勤務だけど僕は地方のどさ回り、姉さんは長官としての視察やらで日本所か世界中飛び回る事も多い。

 そんな僕ら姉弟が顔を合わせることはほぼ無い。

 それに僕は一人暮らしで姉さんは結婚して旦那さんに当る裕利さんと一緒に暮らしている。

 姉弟であっても家が違えばそうそう会う事も無いのだよ。

 そんな訳で、悲しいかな僕達姉弟が出会う第一声は大抵「ひさしぶり」になってしまう。

 そんな姉弟なんだけど、なんだかんだで二人とも姉弟使いが荒いのだ。

 遠慮が要らないのが一番の理由なんだろうけど、事仕事のことになると姉さんは酷い。

 

 実際今日も出会って二言目が「早速で悪いんだけどソウちゃん、ティル使って周囲調べてくれない?」って感じで、オペレーターに急かされ合流を急いだ僕はまだお昼さえ口にしていない。

 その旨を伝えても「いいから早く」だ。

 取り敢えず僕は姉さんに促されるままに解除申請をオペレーターに送ることにした。


「――――此方BH001アサヒ、応答願います」

「ジジッ―――もぐもぐっ・・・此方エスゼットエー本部、BH001アサヒ特派員どうしましたか?」

「・・・・食事中にごめんね。待機状態セルフスタンバイモード解除お願い」


 絶対コイツもぐもぐタイム中だったよね。

 せめて僕もおにぎりぐらい頬張りたいもんだ。 


「すっすいません―――移行先は標準状態スタンダードモードで宜しいですか?」

「うん、ティルの索敵使用するだけだからそれでお願い」

「―――了解しました。それでは、待機状態セルフスタンバイモード解除、武装限定解除――――オールグリーン」

「―――――霊子力封印解除―――――」


 周囲のLoonを吸い取る様に自分の中に力が溢れていくのが解る。


「――――武装限定解除――――」


 手にした短剣が薄く輝き出す。

 僕の愛剣ティルフィング―――正式名称核融合式霊子力剣弐式―――が、仄かに起動し始める。

 

「キドウ・・・・キドウ・・・BHLoonカクニン――――――シヨウシャカクニン、BH001アサヒ――――シヨウシャニンテイ、オハヨウゴザイマス」

「ああ、おはようティル」


 いつもの様にティルに埋め込まれたティルフィングAIがお決まりの文句をしゃべり出す。

 もう一体幾らティルを起動したか解らないが、起動時はこの台詞以外しゃべったことが無い。


「早速で悪いんだけど、この周辺の高濃度Loonを探査して欲しい」

「ラジャー――――スープラライトゥイングシステムキドウ―――――ショウシャカイシ」


 このティルフィングAI実はもの凄く便利で、武器としての性能は勿論、計算機能、カレンダー及びリマインダー機能、目覚まし、翻訳、MEの探査まで熟す優れ物であります。

 何だったら寂しいときくだらないジョークで僕を笑わせる事まで出来るのです。

 今までで一番面白かったジョークは「核がいっぱい在ればBHは居なくても良いのにね。何故かって?ティルを量産すれば良いからだよ」って言ったときにはぞくりとしたよ。

 だってティルに使用してる核は犠牲になったBHの物を再利用しているからね。

 あまりのブラックさに乾いた笑いしか出なかったけど、その笑い声を聞いたティルが「オキニメシタヨウデ」と言ってきて何故か爆笑してしまったんだ。


 ティルに欠点らしい欠点は無いんだけど、ただ、唯一と言える難点があって、ティルを起動し続ける為には、刃を晒したままLoonの供給を続けなければいけないという、なんとも現代社会にそぐわない条件が必須なのだ。

 そしてLoonを送るにはBHが今の僕のように標準状態スタンダードモード以上への移行が求められる。

 そして高濃度のLoonにBHは晒されることによりLoonの浸食度が進む。

 やっぱり呪われた武器だよね。


 急にティル本体が動き出し、その切っ先で方向を示してくれる。


「コチラニ200メートルイジョウススンダトコロニMEハンノウアリ――――」


 そしてティルと連携するスマホとか無いから索敵してもこんな感じにアバウトにしか教えてくれないのだ。


「ありがとうティル」

「ドウイテシマシテ」


 ティルフィングの切っ先が指し示す方向にはエクスカリバーそびえ立っている。

 直線距離にして500メートル程だ。

 エクスカリバーの相変わらずのその姿は雄大で、陽光を集め輝いてるように見える。


「どうやらあっちに居るみたいだけど?」


 僕は姉さんに問いかける。

 どうするのと?


「そうね―――きっとMEはエクスカリバーを目指すはずよ。私たちは車でエクスカリバー迄戻りましょう。支部まで戻れば最新の探査機もあるでしょうし詳細なMEの位置も掴めるでしょう」


 エクスカリバーは市街地と反対方向にある。

 此処からだとほぼ民家も無いが全くゼロというわけでも無い。

 それなのに姉さんはMEはエクスカリバーを目指すはずと言っている。

 何か確信めいた物がある言い方だ。

 あそこには僕の知らない何かがあると言う事か。


「了解、夕紙さん運転宜しく」


 そう言って僕は助手席に乗り込む。

 勿論ティルは収納し自身も待機状態セルフスタンバイモードに戻っている。

 取り敢えず難しい事は後で聞くことにしよう。

 今は早くエクスカリバーに戻って状況を確認したい。

 それに僕の予想だと今日と言う日は、かなりタフな一日になるだろう。

 後の事を考えると、ちゃんと食事も取っておかないとね。


「良いんですか?ME放って置いて?」

「たぶん大丈夫よ。ME自体まだ其処まで成長しきって居ないし、ハッキリした居場所を特定できていないのに闇雲に探しても労力の無駄よ。それに今回のMEの行動が興味深いわ、まぁ詳しいことは移動しながら話しましょ。タイムイズマネーよ、ほらほら」


 そんな話し外で行い、姉さんと夕紙さんが車に乗り込んでくる。

 乗り込んできた二人に僕は僕の要求を投げかける。


「取り敢えず僕は情報の摺り合せががしたい。後僕お腹空いた」


 何となく夕紙さんがあきれた顔をした気がしたが僕はそれをあえてスルーした。

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