四品目『人気トラットリアの過去』(4)
その後、復活した料理長に話を伺いました。もちろん。思うさまサーモンを捕獲した後です。
何度か復活して襲い掛かってきましたが、その度に私に蹴られ沈黙する、を繰り返しているうちに諦め、私がサーモンの捕獲を終えるのを体育座りで待っていました。
「料理長、地球外生命体ですよね?普通、それ見た後、どうして襲い掛かって来たバケモンに冷静に対処してんすか」
いやぁ、面白い様に獲れるサーモンに私のアドレナリンも全開でしたから。獲る、蹴る、獲る、蹴るしか頭にありませんでした。
そして私のサーモン記録が百匹を軽く超え、私も大変満足して、料理長の前に腰掛けたのです。そして問いました。『貴方は何者ですか?』と。
「スゲー今更感!」
料理長は流暢な英語でこれこれこう言う者だと名乗りました。つまり、自分は別の星からやって来たと。
そして先程の触手がその証拠だと。私は理解しました。この目の前のニンゲンの姿をした生き物は地球外生命体なのだと。そして尋ねました。『貴方は美味しいのですか?』、と。
「そんなこったろうと思いました」
普通聞きますよね!地球外生命体ですよ!?目的とかそんなんどうでもいいんです!私はその時、サバイバルナイフを持っていましたから、おもむろに引きずり出したら、料理長に触手でビンタされました。
「当然ですね」
仕方なく私は嫌々、地球への来訪の理由を尋ねました。
料理長は迷いなく、更に濁りない瞳で言いました。『増えすぎてしまった仲間のせいで、母星が食糧難だから人間を捕食しに来た』、と。
「それは聞いたっすね」
確か料理長の正体を打ち明けた時に目的も話しましたね。
そんな事よりも、私は歓喜に打ち震えました。料理長が美味しいかは二の次になりました。
何故なら、ニンゲンを美味しいと思う人物が目の前に居たからです。私はパッションのままに獲り続けたサーモンもそのままに、料理長の両手を取っていました。
『私も人間と言う生き物が今のところこの世で一番美味しいと思って居るのです!仲間ですね!』。そう言った私をドン引きで見つめる料理長の第三の目が今でも忘れられません。
人間が人間を食べるなんて、地球外生命体の彼からしてもどうにも不思議だったようです。
「店長、マジで揺るぎなく十年前と同じなんすね」
それから取り敢えず、これからどうなさるおつもりですかとも尋ねました。彼の宇宙船が着陸したのがどうやらそのカトマイの周辺だったようで、その場で人間や他の動物を食べ漁っていたようですね。それ以上南下する方法も知らず、そこから動けなかった所に私がやって来た、と言うわけだったらしいです。
「料理長、地球の世情に詳しいのか疎いのかってとこっすね」
しかし、それがきっかけで意気投合し、運びきれないサーモンをテントまで運んでいただいた後、私のサーモン料理をふるまいました。
それはそれは感動したらしく、二人でその晩はサーモンパーティですよ。料理長の食べた人間のリュックサックからお酒も出てきましたし、飲んだり食ったりです。
「嫌なパーティーだなぁ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます