第12話 白いテント
アスカが恐る恐る馬車を降りると、そこはやはり見覚えのある、思い出の川のそばだった。
騎士たちが野営の準備をしている。山を越える前に今夜はここで野宿をするらしい。
ジェイドは乱暴にアスカの腕を引っ張り、白いテントの中へ放り込んだ。
そして一人の若い騎士を呼びつける。20歳にはなっていないだろう、まだ頬に赤みがさす騎士が緊張した面持ちでやって来た。
ジェイドはその若い騎士の顔をアスカに近づけ、しっかり見せつける。
「いいか。お前が私から逃げようとしたり、命を絶とうなどとしたら、この男の首をはねる。
拷問の限りを尽くしてからな。」
騎士の顔が瞬時に青ざめる。しかし
「わたくしにそのような大役を頂けること、身に余る名誉です。」
と言った。
「そんなっ・・・!」
アスカは心臓が冷たくなるほどの恐怖を感じる。
「目印だ」
ジェイドはそう言って、若い騎士の首にナイフで十字の傷を入れた。
「やめてやめて!ボクは絶対逃げません!・・・死んだりもしません!!」
騎士から流れ出る赤い血・・・騎士はうめき声一つ上げることはなかった。
「分かればいい。お前はもう下がれ。」
騎士は血を流したまま白いテントを出ていった。
体中の力が抜けてその場に崩れ落ちるアスカ。
(ボクは・・・自由に死ぬことも出来ないんだ・・・!)
正直、男に体を自由にされるくらいなら、自ら命を絶とうと思っていた。
ジェイドはその考えを見透かしているかのようだ。
ジェイドはお酒をゴブレットに注いで、一気に飲み干した。そしてまた注ぐ。
「飲め」
そのゴブレットをアスカに向ける。アスカは首を横に振った。
「お前に拒否権はないと言ったはずだ。あの騎士の耳をそごう」
「やめてください!飲みますから!」
「ダメだ」
テントから出ていこうとするジェイドにアスカは追いすがる。
「お願いします!お願いします!何でもしますから、関係ない彼を傷つけないで!」
「何でもする?」
ジェイドはアスカのマントをはぎ取った。マント以外はなにも着ていなかった。
「その格好で、私の前に立って酒を飲み干せ」
ジェイドは布で作った椅子に腰かけ、舐めるようにアスカを見た。
アスカは裸でゴブレットを持ち、座っているジェイドのすぐ前まで歩いて近づき、震えながらお酒に口をつける。
強いお酒が喉から胃に流れ落ちるのが分かった。すぐに顔が熱く、赤くなる。
太もも、腹部、乳房にも赤く色が付いていくのを、ジェイドは眺めた。
恥ずかしさとお酒のせいで倒れそうになるアスカの乳房をジェイドは強く掴む。
「い・・・いやっ」
驚いてお酒を自分の体にこぼしてしまうアスカ。
ジェイドはそれを舌で舐め取り始めた。
アスカの心臓は壊れそうなほど大きく速く鼓動する。
(ボクが拒否したり、逃げたりしたら、あの騎士さんが・・・)
そう思うと身動きが出来なかった。
(こんなこと、どうってことないって思おう・・・。だってこれから何があっても、ボクは生きないといけないんだから)
ジェイドの舌がこぼれたお酒を追って下腹部にたどり着いた時、テントの扉の向こうからひどく慌てた、大きな声がした。
「隊長!大変です!人魚の村に化け物が上陸しました!」
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