第24話 大学3回生、10月

10月。


美雨ちゃん。

俺の彼女だ。

可愛い、天使。


今日はデート。

美雨ちゃんは、俺の横を歩いている。

何か話題を振らないと・・・


「あの」


話しかけようとして・・・思わず手と手が触れる。


ばっ


慌てて、手を離す。


「あ、ごめん」


「ごめんなさい」


お互い謝り、謝罪の言葉が被る。


じっと見詰め合い、


「ふふ」


「えへ」


ほぼ同時に、笑みが溢れる。


恋人とのデート。


嬉しいけど・・・緊張する。


「・・・帰って良い?」


後ろから凛夏の声。


「凛夏、何を言うんだ。凛夏がいないと、緊張でどうにかなってしまいそうだ」


「そうだよ。凛夏がいないと、どうして良いか分からなくて・・・またおにーさん避けちゃうよ!」


凛夏が低い声で、


「いや、あんた達、何年も一緒にいたよね。3年同棲して、今もしてるよね。付き合う前から常にべたべたしてたよね」


「あれは、妹の親友としての関係性だろ。恋人ともなると次元が違う」


「恋人でもないのにあんな事してた方が異次元なんですけどっ」


「凛夏、今日は毒舌が冴えてるね・・・」


美雨ちゃんが苦笑いして言う。


「何年も、お兄に近づく女の子を闇に葬り続けた女がそれを言う?!自信を砕く方向で接触して、何人再起不能にしたの!うちのアイドルグループだって、ダース単位で被害にあったんだから」


「・・・凛夏のアイドルグループで、お兄さんに近づこうとした女の子って・・・凛夏が手を回した女の子の方が多いよね?」


「だって仕方ないでしょ。資格ない娘がお兄に近づくのは許せないよね」


そんな事があったのか。


「・・・でも、確かに、凛夏の言うとおりだ。何時までも凛夏に頼る訳にはいかない。クリスマスには・・・恋人と二人きりで、手を繋いで歩きたい・・・」


「です!頑張りましょう!」


「・・・頑張ってね」


凛夏の投げやりな声。


・・・と、そろそろデートの終わりだ。


「時間だ。今日のデートはここまでにしよう」


ぽふ


美雨ちゃんが抱きついてくる。


「おにーさん、緊張しましたあ」


俺も美雨ちゃんを抱き返し、


「美雨ちゃん、お疲れ様。凛夏も、付き合ってくれて有難うな」


凛夏に御礼をすると、


ちゅ


美雨ちゃんに労いのキスをする。

くてっと美雨ちゃんの力が抜け、更に体重を預けてくる。


「・・・頑張ってね」


凛夏は投げやりに言うと、溜め息をついて立ち去った。

・・・先が長いと思われたのだろうな。


クリスマスまで後2ヶ月。

決して長い期間では無いけど・・・


それでもきっと、美雨ちゃんとの距離を縮めてみせる。

この可愛い天使との未来の為に。


「ふふ、おにーさん」


美雨ちゃんが、目を細め、唄うように呟いた。


-- fin


******************************************


この話は此処で終わりとなります。

お付き合い下さり有り難うございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【2万PV】妹の親友に告白しようとしたけれど、既に手遅れだった件。仲介を頼もうとした妹が真顔。そう、分かっている。俺のセクハラが原因だ。あの日に戻れたらやり直したい。 赤里キツネ @akasato_kitsune

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ