第13話 高校3年、1月
1月。
美雨ちゃんと一緒に年越し、そして初詣。
「凛夏は初詣どうするんだ?」
来るな、俺と美雨ちゃん二人だけで行かせろ。
こっそり念じる。
「一緒に行く訳無いでしょ。私はまだ死にたくないし、別行動にするわよ。怖いから、お兄はさっさと美雨を連れて行って」
良く分からない事を、呆れた様に言う凛夏。
・・・俺顔に出てたか?
でも、祈るような感じだけで、脅迫したつもりは無いのだけど。
「だってさ。美雨ちゃん、行こうか」
「はい、先輩!」
満面の笑みを浮かべ、美雨ちゃんが頷く。
本当に天使だ。
美雨ちゃんは、うちの親に手伝って貰って着た振袖姿。
凄く可愛い・・・お姫様みたい。
正月の0時。
外は街灯の灯りと、月明り。
昨日の夕方から・・・去年から降り続く雪が、地面を覆っている。
人通りは有る。
皆、近所の神社に初詣に行くのだ。
・・・カップルが多い。
爆発しろ。
「先輩・・・眠いです・・・」
美雨ちゃんがくてっと、体重を預けてくる。
「寝るな、寝たら死ぬぞ」
「うう・・・寒い・・・眠いです・・・」
「仕方がない、服を脱いで温めあうしか」
「それは自室でお願いします」
自室なら良いのか。
体重を預けてくる美雨ちゃんを連れ、神社に向かう。
列に並び順番を待ち・・・
美雨ちゃんが熱心に願い始める。
「先輩が大学合格しますように」
やっぱり美雨ちゃんは優しい。
熱心に祈ってくれている。
判定は相変わらずAのままだ。
「先輩の彼女になれますように」
・・・?!
これ、先輩=俺じゃないな。
美雨ちゃんの意中の人だ。
紛らわしい。
熱心に祈った後、顔を上げる。
「随分熱心に祈っていたね」
美雨ちゃんはくすり、と小悪魔的に笑うと、
「はい。願い事の内容は内緒です」
ぺろっと舌を出す。
「内緒、と言うか、先輩が大学に合格するとか、先輩の彼女になりたいとか言ってたよね」
ぼふっ
耳まで真っ赤になる美雨ちゃん。
「ななな・・・先輩・・・ちが・・・その・・・口に出てましたか?」
やばい、涙目可愛い。
「うん」
「や・・・あれは・・・違うんです!」
違うのかあ。
どきっとさせられた仕返し。
500円玉を投げ入れ、
「美雨ちゃんが俺の彼女になりますように」
ドサ
美雨ちゃんが自分の財布の中身を賽銭箱にぶちまける。
?!
諭吉が何枚か見えたんですけど?!
俺の願いに対抗して・・・がくがく。
「美雨ちゃん・・・?」
「・・・あ、つい」
呆然と呟く美雨ちゃん。
まあ・・・やってしまったものは仕方がない。
ぎゅ
また腕に抱きついてきた。
頭を撫でながら、
「じゃあ、帰ろうか」
「はい!」
帰り道。
温かい甘酒が売っていた。
美雨ちゃんは欲しそうに見るが、一文無し。
美雨ちゃんに甘酒を買ってあげると、一口飲んでこちらに差し出す。
「先輩、冷めるので、交互に飲みましょう」
「そうしようか」
二人で交互に飲みながら、家路を楽しんだ。
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