第10話 高校3年、10月

10月。

気分転換に、美海ちゃんとアイススケートに来ていた。

ちょくちょく二人で出かけているのは、恐らく受験生の俺を気遣ってくれているんだろう。

本当に美海ちゃんは天使だ。

疑似恋人気分を味わえていて、幸せだけど・・・実際は、ただの妹の親友が遊びに付き合ってくれているだけなんだよね。

美海ちゃんとの生活も、後半年。

この半年、本当に楽しかった・・・


受験生なのに滑るのはどうかとは思うけど。

そんな縁起担ぎしてても仕方が無い。


さっきから、周囲の視線が痛い。

あんな美人とあんなぱっとしない男が・・・そんな視線だ。

でも、美海ちゃんと一緒に居られるのだから、そんな視線を受けるのも甘受しよう。


「先輩、さっきのが前に表彰された時の奴ですか?」


「そうだね・・・実際には、あれを組み合わせてやるんだけど・・・あの時の方が上手く滑れたかな」


大会に出たことがあって、そこで滑った事が有る。


「先輩はメダル噛まなかったですよね」


「噛まないよ・・・凜夏は噛んでたけどね」


昔からの風習で、金メダルを貰った人が噛む、と言うのが有るらしく。

俺はやらなかったけど、同じ大会に出ていた妹は噛んでいた。


「では、お姫さま、一曲如何ですか?」


「はい、喜んで」


二人でスケートリンクに上がり、滑る。

くるくる回りながら、踊るように。

銀メダルとった人より、美海ちゃんの方が上手い気がする。

周囲の人も、みんな美海ちゃんに見惚れているようだ。

今だけは俺がその美海ちゃんを独占。

本当に、これがずっと続けば良いのに・・・でも、それはかなわない願いだ。

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