第9話 高校3年、9月

9月。

気分転換に山登り。

何故2人で出掛ける事になったか、経緯は覚えていない。

でも、最近勉強ばかりだったから、空気が美味しい。


「先輩・・・もう駄目です・・・おんぶして下さい」


美雨ちゃんはもうへばったようだ。

フルマラソンを2連続で走ったりしてたのに、山道は疲れるようだ。


「仕方がないね、どうぞ」


しゃがむと、美雨ちゃんが背中にしがみつく。

汗で濡れてじっとりした肌。

背中に強く主張する大きな物。

非常にエロい。


しっかりお尻を支えて・・・


「先輩、揉まないで下さい・・・」


美雨ちゃんが非難する様に言う。


「なかなか位置決めが難しくてね」


そもそも、美雨ちゃんがもぞもぞ動き続けるから、色々と。

いや、人のせいにするのは良くない。


立って歩き始める。

とりあえず、休憩出来る所に。


美海ちゃんを背負って歩いていると、大きなキノコが生えていた。

多分毒キノコかな。


「ほら美海ちゃん、キノコが生えているよ」


美海ちゃんははしゃぐようにもぞっと背中で動くと、


「本当だ、食べられますかね」


器用にスマートフォンで写真を撮っている。


「食べない方が良いだろうね。多分毒キノコじゃないかな」


「・・・食べてえっちな気分になったりしたら困りますからね・・・」


美海ちゃんがぎゅっと抱きついてくる。

そんなキノコは実在するのだろうか。


「あのキノコ・・・先輩のキノコとどっちが大きいですかね?」


俺のキノコ・・・妹に栽培キット押しつけられて、育てている奴だな。

飼育ケースの大きさがそこまで大きくない上、小さいのが大量に生えるタイプだから、比べものにならない。


「俺のキノコは、アレとは比べものにならないくらい小さいよ」


ケースも見せた事有った筈だけど。

でも記憶って薄れるからなあ。


「でも・・・本気を出したら大きくなるんですよね?」


・・・?

いや、キノコが本気を出すの意味が分からないし。

水を吸ったら大きくなるって事だろうか。

そんなタイプのキノコではない。


「本気を出しても小さいと思うよ」


「・・・あ、でも・・・あまり大きくても困りますしね・・・」


そりゃ、せっかくコンパクトな飼育セットなのに、あんな大きいのが生えたら困るよね


「此処では見せられないから・・・帰りに俺の部屋に寄るか?俺のキノコを見せるよ」


「・・・!是非御願いします!見たいです!」


嬉しそうに言う美海ちゃん。

見た事あったと思ったけど・・・まあでも成長早いしね。

前見た時よりは育っている。


キノコも通り過ぎ、木陰に岩があった。

此処なら休憩出来そうだ。


「美海ちゃん、休憩していこうか」


「はい!」


美海ちゃんはひょこっと、背中から降りると、てーっと走り、ちょこん、と岩に腰掛ける。

歩けない筈だけど、最後の力を振り絞ったのだろう。


リュックからお茶を2本出し、ぴちゃっと美海ちゃんのほっぺにくっつける。


「ひゃっ、冷たいです!」


美海ちゃんが驚いた声を出す。


「はは。凍らせておいたからね」


一本を美海ちゃんに渡し、もう一本を飲み始め・・・少し飲んだところで、美海ちゃんが飲んでない事に気付く。


「美海ちゃん、飲まないの?」


美海ちゃんが遠慮がちに言う。


「あの・・・!私もウーロン茶が良いので、先輩の飲んでるのを貰えますか?」


たしか新品のウーロン茶ももう一本あった筈だけど。

間接キスになるけど・・・まあ良いか。


「はい」


美海ちゃんに俺が飲んでたウーロン茶を渡す。


「有り難うございます!」


飲み口を舐めるように舐めた後、ウーロン茶を飲み始めた。


「こっちは一旦回収しておくね」


美海ちゃんに渡したの方の飲み物・・・ウーロン茶を回収し、バッグに入れる。

・・・あれ?


「じゃあ行こうか」


「はい!」


美海ちゃんも元気になったようだ。

少し休憩したのが良かったらしい。

元気に歩き始めた。


尚、些細な会話の行き違いが有り、俺の部屋に戻った後ちょっとドタバタしたのだけど。

それに関してはまた機会が有れば。

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