第8話 高校3年、8月

8月。

勉強が煮詰まっているので、缶詰。


「先輩、まだまだ厳しそうなのですか?」


美雨ちゃんが、最新の模試の結果を見ながら言う。


「そうだね・・・順調に上がってたんだけど、最近停滞してて」


そろそろ限界なのだろうか。


「この、A判定、っていうのの上が有るんですか?」


美雨ちゃんが尋ねる。

まあ、高校1年じゃまだ実感がわかないよね。


「うん。A+、S、EX、EX+が有るよ」


せめてEXまでは上げておきたい。


「先輩ってかなり頭良いと思うのですが、この大学の・・・えっと、理科三類ってそんなに難しいのですか?」


俺は頭良くないぞ。

美雨ちゃんより2年先行して勉強しているからそう見えるだけだ。


「詳しくは知らないかな。勧められて、面白そうだったから」


俺は身の程をわきまえる男。


「何か手伝える事は有りますか?」


そうだなあ。


「1問正解したら、美雨ちゃんが服を1枚脱ぐとか」


「本当に変態ですね。馬鹿ですね。気持ち悪いですね」


凄い勢いで罵られた。

駄目だよね。


「せめて3問で1枚にして下さい」


美雨ちゃんが頬を膨らませて言う。


「2問なら・・・?」


「駄目です」


取り付く島も無い。


「分かった3問で1枚で・・・」


「仕方がないですね」


頑張って解こう・・・はっ。


「開始前に水着に着替えてくれる?」


「・・・着替え覗かないなら良いですけど・・・」


白のワンピース型水着に着替えてくれる美雨ちゃん。

優しい。

まあ、暑いってのも有りそうだけど。


「着ましたよ」


良し、やるぞ。

順調に問題を解き、3問正解。


「・・・あっ、水着になったら、1回脱いだだけですっぽんぽんじゃないですか!」


美雨ちゃんが気付き、涙目で怒る。

・・・はっ。


「そ、そう言えば・・・」


わざとじゃないよ?

今気づいたんだよ。


「・・・約束は約束です。脱がして良いですよ・・・」


美雨ちゃんが目を瞑る。

ごくり。


そっと水着に手をかけ・・・ゆっくりと・・・


ガチャ


「お兄、美雨〜」


妹の凜夏が、お盆にジュースを載せ、扉を開ける。

あ、やばい、殺される。


「あ・・・いや・・・これはその・・・」


凜夏は、慌てて扉を閉めると、


「ご・・・ごめん!今度からノックする!お邪魔しました!!!」


バタバタ・・・


駆けて去っていく・・・あれ・・・美雨ちゃんに何やってるのかって殺されるかと思ったけど・・・何故か助かった?


「あれ・・・怒られなかった・・・?」


思わず呟く。

美雨ちゃんは、固まった顔が解れ、泣きそうな顔になる。


「ふわ・・・殺されるかと思いました」


美雨ちゃんが呟く。

殺されるのは俺ね。


「・・・汗びっしょりです。冷えたので温めて下さい」


美雨ちゃんが抱きついて来たので、抱きしめる。

色々な意味で心臓の鼓動が最高潮だった。

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