第5話 高校3年、4月

4月。

部活の勧誘合戦が激しい。

美雨ちゃんは学業も優秀、スポーツも万能なので、引く手数多の筈だけど・・・何故か俺のいる弱小模型部に。


ふと気付いて、意中の彼が模型部にいるのか聞いたら、赤くなって、はい、と頷いた。

可愛いけど、やっぱりもやっとはする。

誰だろう・・・そもそも、うちの部、俺以外女の子なんだけど。

部長かなあ・・・


それでも、美雨ちゃんと同じ部活なのは嬉しい。

みんなも歓迎厶・・・何故か微妙な顔をしている。

多分、何故うちの弱小部にこんな高スペックな娘が・・・という疑惑だろう。

まあ、すぐに誤解は解けると思う。


新人歓迎会を兼ねて、旅行。

ローカル線に乗り、民宿に泊まって、また戻る。


「先輩、あれは何ですか?」


お兄さん、から、先輩に呼び方が変わっている。


「あれは藤原の・・・」


事前に調べた歴史の解説。

男とは、可愛い女の子の前では良い格好したいのだ。


「・・・やれやれ、すっかり朧月おぼろづきが独占されているな」


部長がぼやく。

朧月は俺の名だ。


「まだ美雨ちゃんは入学したところですからね。直ぐに他の人とは打ち解けないですよ」


部長に苦笑を返す。

・・・あれ、確か美雨ちゃん、異常にコミュ力あったような。

・・・ああ、意中の人が側にいるから、恥ずかしいのか。


そんな美雨ちゃんの気も知らず、部長が言う。


「・・・君が居なければ普通にみんなと話していたのだけどね」


そう言えば、俺といる時は大抵隣にいるなあ。

妹の親友だし、それだけ信頼されているのだろう。


「先輩、あれは何ですか?」


美雨ちゃんが服を引っ張る。

ええっとあれは・・・


そんなやり取りをしながら、ローカル線の景色を楽しんだ。


--


「先輩、もう寝ましたか?」


美雨ちゃんの幾度目かの問い。


民宿は、2人1部屋だった。

男用に1部屋取るはずだったのだが、部長の手違いで部屋が足りなくなった。

部長が責任をとって、俺と同室で良いと言ったのだが。

部長だけに責任を負わせる訳に行かないと、みんな手を挙げ。

・・・俺、そんなに信用ないのか?


結局、慣れている美雨ちゃんが俺と同室になった。

先程やった怪談が、地味に効いてきたらしく、怖いらしい。

先程から何度も確認されている。

手を繋いでいるだけじゃ怖いかあ。


「・・・寝たんですね」


もぞもぞ、と布団から出て、こちらに来る美雨ちゃん。

怖くて耐えられなくなったようだ。

顔を近付けてくる。

綺麗な顔が近付いて来て・・・止まる。

見つめ合う。


「・・・起きてます」


美雨ちゃんが呟く。


「起きてるよ。怖いなら、一緒に寝る?」


布団をまくってやると、


「・・・先輩が怖いなら仕方がないですね。一緒に寝てあげます」


そう言って、布団に入って来た。

そっと抱き寄せ、


「大丈夫だよ。俺がついているから、安心しておやすみ」


「はい、おやすみなさい、先輩」


尚、翌日、美雨ちゃんの浴衣がはだけてて、ちょっとラッキーだった。

まあ俺もだけど。

浴衣って、すぐはだけるよね。

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