前田薫八の「勝手に受賞作読んでみた感想文」

第9回GA文庫大賞

個人的おすすめ作品ベスト３

１位　デーモンロード・ニュービー ~VRMMO世界の生産職魔王~

２位　君と夏と、約束と。

３位　勇者保険のご加入はブレイヴカンパニーへ!

　１位の「デーモンロード・ニュービー ~VRMMO世界の生産職魔王~」はいわゆるＶＲＭＭＯもの。それにＴＳ、主人公が魔王側なども追加したような、いろんな要素がてんこ盛りな作品。でも、その要素がしっかりと混ざり合い、調和しているのはさすがだと思います。私は今までＶＲＭＭＯものの小説を読んでこなかったのですが、これを機にもっとＶＲＭＭＯものの作品を読みたいと思いました。それほど出来のよかった作品です。

　２位の「君と夏と、約束と。」はＧＡとしては珍しい（？）ＳＦ風恋愛小説です。大人になった主人公のもとに時を越えて中学生のときの彼女がやってきます。しかし、その彼女と主人公とが思い描く過去には違いがあって……。ＧＡには恋愛小説というイメージがなかったので新鮮でした。そして面白かったです。こういう面白い恋愛小説を出せるのだから、ＧＡにはもっと恋愛小説を刊行してほしいと思った一作ですね。

　３位の「勇者保険のご加入はブレイヴカンパニーへ!」はファンタジーの世界で保険業のお手伝いをする主人公という珍しい設定のお話。ファンタジーの世界で保険ってどういうことやねん！　と読む前は思いましたが、読んでみると、「ああ、そういうことか」と納得させられる出来でした。単なる保険のお話ではなく、ファンタジー要素もバッチリあります。様々なニーズにこたえている作品と言えるのではないでしょうか。

その他の作品の感想

「魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate 」： シリアスファンタジー。救いはどこにあるのか、と読んでいて思ったほどの超シリアス！　でも、納得のラストでしたよ。

「魔法使いにはさせませんよ!」： エロ特化のバトル小説。男は三十歳で童貞なら魔法が使えるという世界。主人公はそんな世界でも強力な魔法使いになれる素質を持っていたために、様々なエロい目にあいます。先生がいい味出してましたね。

総評　

　ＧＡはちょっと変わった設定の小説を刊行しているイメージでしたが、第九回に関してはかなりバランスのとれた受賞作品たちではなかったでしょうか。ＶＲＭＭＯ、ＳＦ風恋愛小説、シリアスファンタジーなど、幅広いジャンルが受賞している印象でした。

　特に恋愛小説を受賞しているのは意外でしたね。まだ過去に遡って調査していないのでわかりませんが、ＧＡ大賞の中でも数少ない恋愛小説の受賞作なのではないでしょうか。

　第八回などを読んでいると第九回はちょっと異質と言えるほどバランスが取れていたと思います。この傾向は第十回以降も続いているのか。それとも第九回だけなのか。それはまだわかりませんが、受賞作品の傾向が変化する要素がある回だったと思います。今後のＧＡの動向は要チェックですね！