第3話 決定

 細かい説明を聞いていると、思い浮かんだ事があり、

「この転生のシステムって、MMOのキャラクターメイキングに似てますよね?」

「よく言われるんですよ。たぶん、ここの記憶が残っている転生者が関わったのではと思うのですが…。」

「なるほど…。」

 さっきの言葉に引っかかり、

「ここでのやり取りって、記憶から消えるのですか?」

 髑髏の目の黒い穴の奥が『キラリ』と光り、

「鋭いですな。」

と、感心し続けて

「基本的にここでのやり取りは転生後、転移後に消えます。稀に残る方もいらっしゃるみたいですが、はっきりとではなく、朧気(おぼろげ)にだとか。」

「その朧気な記憶がある人がアイデアとして、キャラクターメイキングを作ったと…。」

「たぶん。私の仕事はここに限定されているので、その後は詳しくは解りません。仕事仲間の噂程度なので。」



 結構、長かった質問。


「要望の質問は以上で終わりです。ご確認を。」

と、鞄から取り出したのはタブレット端末。

「えっ。」

 驚愕して固まった。

「どうされました?」

 タブレットの画面を操作し、こちらに差し出した。

「さっきまで、紙にペンで書いてましたよね…。」

「これですか。これもあなた方のイメージを守る為の小道具です。」

 ペンの先をこちらに向け見せた。そこには小さな光が灯っていた。

「ここで、書いた文字を読み取ります。」

 ペン先の光の横にあるガラス部分を指さした。

「は、ハイテクなんですね。」

「いえいえ。音声入力もあるのですが、イメージ厳守と言うことで使用禁止となっております。」

「最後の確認は、流石に現物を見ていただいた方がよろしいので、ここだけはタブレット端末を使用してもよいということになっております。」

 差し出したタブレットの画面を見ると、3Dで描かれたキャラクターがゆっくりと回転していた。

「拡大いたします。」

と、画面のキャラクターを親指と人差し指で掴むと、上方向に引っ張る。

「あぁ!」

 死んだ事よりも驚いた事に、画面の中に3Dで描かれたキャラクターが、3次元空間に飛び出した。

「キャラクターに触っていただければ自由に動かせますよ。」

 その言葉に恐る恐る右手を伸ばしキャラクターに触ったが感触は無い。


 驚きから開放され平常心に戻る頃には、俺のイメージとキャラクターを比べられる様になっていた。

 細かく動かして、細部をチェック。


 どれくらいだろう。随分と永い時間チェックしていただろうか。髑髏は、紅茶をすすりながら待っていてくれる。


 イメージと違ったところを、修正してもらい。ようやく、転生後の姿が決まった。

「これで、お願いします。」

「解りました。」

と、ペンを渡され、

「ここに、サインをお願いします。」

 書き込んでいた紙を指した。

「あっ。サイン後は、変更できませんので、もう一度確認される事をお勧めします。」


 その言葉に少し不安になり、もう一度確認作業をした。


「はい。大丈夫です。」

 俺はサインし、ペンを返した。



「これで、転生後の姿が決定しました。」

と、サインした紙を捲(めく)り、次の紙を出した。

「では、これから転生する世界を決めていただきます。」

「それも選べるんですね。」

「重要事項ですので。」


 少し考え、

「『剣と魔法のファンタジー』世界でお願いします。」

「少々、お待ちください。」

と、タブレットを操作し、

「非常に申し上げにくいのですが…。」

「何か問題でも?」

「ご希望された世界がですね…。」

「世界が?」

「人気の転生先となっておりまして、順番待ちの時間が非常に長くなっております。」

 タブレットを見せてくれるが、読める文字では無かった。でも、解った。画面の一部の表記が濃い赤になっていた。こちらの世界でも、赤文字は警告色らしい。

「そうですか…。」

 更に考えて、

「では『魔法とロボットのファンタジー』世界はどうです?」

「そちらは、先程よりも混み合っておりまして…。少し前から大人気の転生先に…。」

 申し訳無さそうに言った語尾は声が小さくなっていた。

「最近の転生先の注目世界『原始時代』は、今でしたら多少は空きがございます。なんでも、漫画の影響とかで、人気が急上昇ですが…。」


 どうするか? 思案中…。

「やっぱり『剣と魔法のファンタジー』にします。」

 決意して、

「多少は、待っても俺が希望する転生先が良いです。」

「そうで、御座いますね。」

と、ペンを走らせた。


「では、ここにサインをお願いします。」

と、先程と同じ様にペンを渡してくれた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る