第2話 此処は?
「やっちまった。」
それが今の俺を表する言葉。それ以外に思い付かない。
何をやっちまったかって…。そうだな解らないな…、説明しておこう。
あれは車の運転中…。助手席に置いたスマホが鳴る。後でかけ直せばと思いつつも、一瞬意識がスマホへ向かう。
気が付いた時には遅かった。スマホに気を取られた一瞬見落とした信号。慌ててハンドルを切る…。
が、間に合わないのは判った。目の前に迫る止まっている車のテールランプ。
「このぉ!」
ブレーキも思いっ切り踏み付ける。
止まっていた車の後部に軽く接触し、歩道側の電柱へ一直線。目を瞑ればはっきりと思い出す電柱。そして、潰される俺の体。
まあ、他の人が巻き込まれてないのが不幸中の幸いか…。
俺は直前に起きた事を思い出していた。
一通り思い出すと、気になったのは俺が今居る此処。
白い靄(もや)がかかった様な、この場所…。
不意に後から、
「◯◯ □□さんですね。」
(*プライバシー保護の為に伏せ字になっております。ご了承ください。)
名前を呼ばれた。
振り向いた俺が見たのもは…。
髑髏がスーツを着ている!? とおもったが早いか声に出していた。
「だ、誰だ。」
その声に含まれた意味に気が付いたのか、
「私の名誉の為に言っておきますが…。」
身を乗り出し、
「この格好は、あなた方人間が作り出したイメージを守る為の言わば制服です!」
声に不満が含まれていた。
「勝手なイメージ付けをして、こっちはいい迷惑なのですよ。」
右の人差し指を、俺の顔の前で上下させる。
「まあ、あなたに言っても仕方ないのですがね。」
「すみません。」
謝ったのはイメージ通りだと思ったからなのだろう。
「で、どうされますか?」
いきなりの質問の意味が分からなくて、キョトンとしていると、
「あっ、申し訳ない。最近、仕事が立て込んでいて、誰にどこまで話したかが混同していまして…。」
髑髏の頭を右手で掻いた。
かしこまり、
「改めて、◯◯ □□さん。あなたは生前に転生を希望なされていましたね。」
その質問が、俺の人生で最大の驚きだった。
「は、はぃ…。」
確かに、最近のアニメ、漫画、小説で転生が流行っていて自分もできたらな…、とは思っていたが…。
「希望は質問形式で行いますが、解らないな事があれば遠慮なくおっしゃってください。」
と、右腕をさっと振ると、そこだけ靄が晴れ白いテーブルと椅子が現れた。まるで、据付けられていたかのように。
「どうぞ。」
促(うなが)させれた。
「お飲み物は紅茶で宜しいですか? と、言いましてもこれしか無いのですが。」
『タカタカ』笑った。
カップに注がれた紅茶が出されると、鼻孔が擽(くすぐ)られた。
髑髏が一口し、
「先ずは、性別から決めましょうか?」
「性別ですか?」
「はい。今の◯◯さんは男性ですが、転生希望ならば変更は可能です。」
「そうですね…。」
ふと、気になり
「変更できない場合ってあるんですか?」
「御座います。転移希望だと、性別の変更は不可能になります。」
納得な答えただった、確かに転移だとそのまま異世界へ行くのだから…
「今からでも、転移は可能ですか?」
「いえ、転移希望の方は担当係のものが肉体が使用不能になる前に回収に参ります。◯◯さんの場合はもう肉体が使用不能でして。」
確かに、事故で体が潰れた感触があった。
「では、男性でお願いします。」
「性別は男性と…。」
鞄から出した紙にペンを走らせる。
「年齢はいかがいたしましょう?」
「年齢…。」
考えなくても、
「16歳で。」
「年齢16歳と…。」
主人公と言えばの年齢を選択するのは当然である。
「体型…、身長と体重はどれくらいにいたしましょう?」
「えっと、170cm、60kg…。筋肉質って選べますか?」
「選べますよ。」
「では、それで。」
「はい。」
ペンで欄を埋め、備考に『筋肉質』と書いた。
「目、肌、髪と色を選べますが…。」
「細かく選べるのですね。」
「はい。なんでも、ストレスをあたえないためだとか…。」
「ストレスですか?」
「転生、転移に限らず世界を渡ると言う事は循環なのです。その循環を妨げるのがストレスなのですよ。」
「よく解りませんが、ストレスはどこの世界でも良くないと…。」
「そう、思っていただければ…。」
髑髏が顔を近づけて来て、
「ここだけの話、私も良く解っていないのですよ。」
その言葉に思わず吹き出してしまった。釣られる様に骸骨も『カタカタ』笑う。
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