案内人

ノザ鬼

第1話 紹介

 白いテーブルに同色の椅子。用意された紅茶を淹れるための道具はカラフル。


 紅茶を用意し腰掛けた。


「皆さん、こんにちは。」

 手に持った香り豊かな紅茶は、口に運び一口。

「午後の優雅な一時を如何お過ごしでしょうか。」


 身なりは、仕立ての良い黒のスーツにアイロンの効いた白いシャツ。ネクタイは細い紐状。手袋の白さが眩しい。靴もよく手入れされていて、黒い艶に光が反射している。頭を飾るのは黒の中折ハット。

 整った顔立ちは髑髏(どくろ)。目の黒い虚構は何を見詰めるのか。


『ジリリリィ』『ジリリリィ』と鳴るのは、レトロな電話機。

「はぁ…。またですか…。」

 半ば諦めの様な溜息。手にしていた紅茶のカップを電話機の横に置き、受話器を取り、目と同じく虚構の耳に当てた。


 相手に相槌を打ちながら内容を聞いていが、利き手は右なのだろう受話器を左に持ち替えメモを取り始めた。

「はい。解りました。直ぐに対応いたします。」

 受話器を戻し、メモを確認する。


「私ね。」

 愚痴であると確実に解る口調だ。

「暇な窓際部署に配置されたと喜んでいたんですがね。」

 どうやら仕事の愚痴らしい。

「最近、ブームとかで急に忙しくなりまして、休む間もなくなりました。休憩もろくにとれないなんて、最悪ですよ。」

 残った紅茶を一気の飲み干した。


 頭が髑髏なら体も同じはず…、ならば飲んだ紅茶は何処へ? 等とは詮索(せんさく)は無しにお願いします。


「早くブームが去ってくれると助かるのですがね。」

 椅子の横に置かれた、これまた黒い鞄を手に取り立ち上がる。

「早く片付けないと…。」

 焦りが見える。忙しいのは本当らしい。


 そそくさと出掛けた。



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