第72話 集合

「みんなに重要なことがあって俺の部屋に集まってもらった」

できるだけ、いつもの雰囲気で話すように心がける。

京は、もうすでに知っているが春と燐を驚かせないように配慮した俺の意志を汲んでくれているらしく気づいていないふりをしていた。


「それで、話って何?」

春が不思議そうに聞いてくる、

「そうだよお兄ちゃん、いきなりどうしたの?」

燐もどこかソワソワした様子だ。


「まあ、話を最後まで聞いてほしい」

俺は、ありのまま全てを話した。

もちろん、京も全てをしているわけではないので、所処驚いていた。


「そんな。お兄ちゃんどうして今まで言わなかったの」

「確実性があんまりなかったから離せなかった…」

嘘だ、燐に春、京この3人に拒絶され、離れていかれるのが怖かった。

だが、そんなことを言えない。


「だからって、ねえ栄治…何かこれのほかに話すことがあるんじゃないの?」

流石春だ、俺のことをわかっている。

「俺は、こんな状態で新しい人格が出てくるかもしれない。だから、離れて行ってくれてかまわない。離れていったなら、今まで通りに話しかけたりすることもなく他人としてふるまう」

はぁ…言ってしまった。こんなことを言いたくはなかったのだが、後々傷つけてしまうくらいなら今のうちの方がいいだろう。

様々な出会いがあるから。


「お兄ちゃん?馬鹿なの?どんなお兄ちゃんでも嫌いになるわけないでしょ」

「そうだよ、どんな栄治君でも大丈夫だよ」

「燐と京の言う通り。大体、栄治といるのは自分の意志だし」


「燐、京、春…」

思わず泣いてしまった。

「悪かった…、俺だって他人のようなふりをしたくなかった。でも、お前たちの為だって自分に言い聞かせて話したんだ。」

結局、最後は自分への言い訳のためにやってしまったことあが情けなくて、情けなくて…

「お兄ちゃん、一緒に治す方法を探そう?」

「おう…」



本当にいい奴らと出会えたんだな俺…


そうだろ?自慢のみんなさ。こうやって自分の中で会話ができるんだ、これからは2人でうまく生きていこう。


そうだな。まあこれから増えていく可能性もあるんだが…


その時はその時さ。多分うまくやれるよ。俺たちができてるんだから


そうだな…じゃあお前に変わるよ。


わかった、じゃあゆっくり休んでくれ。



「ただいま、いつもの俺だよ」

「「栄治(君)」」

「お兄ちゃん」

3人が飛びついてきた。

「うおっ、3人には迷惑かけるかもしれないけどこれからもよろしく」

俺は、3人を抱いて話した。


「あんたら、何やってんの…」

「「「「あっ…」」」」

 夕飯の準備が済んだ母が呼びに来たらしく、その現場を見られてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る