第53話 おふろスキー

帰ると母は珍しく酒を飲んでいた。

「あいつは昔から連絡がすこし遅いんだから…」

帰ると珍しく母さんが酒を飲んでいた。

「「ただいま」」

「おかえり、はやくお風呂に入ってきなさい」

もともと母さんは酒に強くないので既に顔が赤い。

「京、先に入ってきていいぞ。俺は母さんの介護をしなくちゃならないから」

「わかった。」

京は自室に着替えを取りにリビングから出た。


「それで。酔ったふりをして何を話すつもりなんだ?」

さっきは、京がいたからああいったが、もともと母さんは酒豪だ。

数本程度じゃ酔わない。

「流石我が息子、わかってる~」

うざい。酒は飲みたいけど、こういったウザがらみをするような感じにはなりたくない。

「そんなことより早く本題をいえよ・・・」

「そうだった、そうだった。それで京の母親とは昔っからの仲でね…」

それから昔話が始まった。

次第には聞きたくもない母親のなれそめを聞かされ、精神的に堪えていた。

「そ、それより。なにがいいたいんだよ・・・」

俺は、力尽きそうな声でいう

「私のところにも電話がかかってきたんだけど、いつもの声音と少し違ったから、あんたも一応警戒しておきなさいってこと。」

声音が違った?電話越しの声でそんなものがわかるのかと思っていたら

「あいつは、無茶苦茶だけど感情や現状が声音に出やすいの、だから電話越しでも十分に分かるってわけ。」

なるほど。これも長年付き合ってきた経験からくるものなのだろう。


「わかった。一応警戒はしておくが京には話すか?」

「いや。あの子は、優しい子だからね。変に心配をかけたくないから秘密にしておいて・・・」

「了解。京が上がってくる前に、自室に戻っておいたほうがいいよ。怪しまれる」

そうだね。と言い残し母さんはリビングから出ていった。

「あっそうだ。ご飯は冷蔵庫の中に入ってるから」


なかなか平穏な日々が続かないな。

京の母親の件に関しては、警戒しておくべきだろう。

こういう時の母さんは嫌なほど当たるからな・・・


「おさきに、次どうぞ」

黒く長い髪の毛はいまだにしっとりしており、艶めかしさを感じる。

頬にもまだほんのりと赤みが残っている。

「わかった。悪いけど、冷蔵庫に夕飯が入ってるみたいだから温めておいてくれるか?」

「わかった」

俺は、風呂へと向かった。


「ふぅぃ~」

この瞬間程、日本人に生まれてきてよかったと感じることはない。

湯船につかると、脳が通常以上に働く気がするので考え事などのことをする際にはうってつけだ。

だが、脱水症状にならないように注意していただきたい。

俺も一回それで死にかけた。あれはマジでつらかった…


警戒といっても何を警戒すればいいのか具体的なものがわからない。

多分だが京に関してのことだとは思う。


湯船につかったが疲れが取れた気がしなかったので、今日はゆっくりと寝ることにしよう。



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