第37話 体育祭1

「おはようございます、天気は快晴です。実に運がいい、皆さん、体育祭優勝目指して頑張ってください」

生徒会長が端的な挨拶をする。

「とうとう来てしまった。体育祭…」

どうにもこういう行事は苦手だ。

さっきから陽キャたちが騒ぎまくっている。これも苦手な原因の一つだろう。

「おはようございます、いや、おはよう栄治君」

わざわざ言い直してる。苦笑しつつ俺は挨拶を返した。

「おはよう京」

向こう側から元気な奴が走ってきた。

「おはよう、栄治君」

「おはよう、春」

「体育祭、絶対に負けないからね。」

ははは、やる気満々だな。

まあこっちも負ける気なんてないと思うけどね。

陽キャたちが自分をアピールするこの日、優勝した日には、調子に乗って女子に告白しそのまま振られて終わることだろう。もし付き合ったとしても場の空気で了承しただけだからすぐに別れるだろう。

ソースは中学校の頃の染谷と嘉市。

嫌いだったなー。


「俺らも負ける気はないと思うよ」

「ははは、他人事のように言うね」

実際のところ俺は勝敗に頓着する性格ではない。

「まあ、互いに頑張ろうな」

俺は右手を差し握手をする。


周りからはいいなーなどの声が聞こえるが、知ったこっちゃない。

握手したいんだったら頼めばいいんじゃねえの?性格がいいから快く了承してくれると思うんだが。

チラッと春を見ると顔が赤くなっており、小声で手を洗わないようにしようとか呟いていた。

「いや、手は洗おうね…」

別に潔癖ってわけじゃないがきれいにしておきたい。

そんな、えーみたいな顔をしないでくれ。

「ほれ、清潔にだぞ」

俺は、春を自クラスに戻るように手を仰いだ。

負けないからねーと走っていった。


「元気な奴だなぁ、なあ京」

京のほうに向くとなにかぶつぶつ呟いていた。

怖い、怖いよこの子。

「あの~京さん?」

「はっ、ごめん」

「謝んなくていいよ。それでどうしたの?」

京は、うなったり、手を出したり引っ込めたりしている・

「うん?なにしてるの?」

上目図解で恥ずかしそうにこちらを見てくる。

うっ、これはなかなかな破壊力だ。

「あの、握手を…」

ん?ああそんなことか。

俺は京の手を握った。

京はふぁぁぁ、と変な声をあげどこかへ走り去ってしまった。

俺はただ一人ポツンとその場に残された。

「櫻のところにいくか…」

俺は、椅子に座って寝ている櫻のもとへ向かった。


「わっ」

俺は寝ている櫻を驚かせてやった。

案の定びっくりした櫻は椅子から落っこちた。

「おい…」

「ごめんて…ジュース一本おごるから」

「4本」

「いや…あのごめんて」

「妥協して2本で許したる」

「仕方ない…昼でいいか?」

「いい」

痛手の出費だ…

止めときゃよかったな。


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