第36話 準備
体育の授業が準備で潰れた。
このことからもうすぐ体育祭が始まることが実感できる。
「もうすぐ体育祭かー」
誰に話すでもなく呟いたのだが後ろから聞きなれた声が返ってきた。
「そうだね、特に何かをするってことはなかったね」
体育祭実行委員と言っても1年なので誰がなんの種目に出場するかの確認くらいしかやってない気がする。
「おら、お前らーさぼらずやれー」
体育教師が声を上げている。
「やるか…」
「だるそうだね…」
「そうでもないよ。体育をやるよりもよっぽど楽だと思ってるよ」
運動が嫌いなので体育は地獄だ。
体育祭が終わったらマラソン大会の練習をしなくてはならない。
終盤になれば涼しくなってまだましになるのだが前半はまだ暑さが抜けず地獄だ。
冬場は、動けば温まっていいだろ?と思う人もいるかもしれないがそうなるまで寒いし、第一温まりたいんだったら暖房のきいた部屋にいればいいだろ?
ようするに体育は悪だ。
あれ?何の話をしてるんだ俺…
ふと京の顔を見ると苦笑いしていた。
「はやく、石を拾おうか」
「そ、そうだな」
俺と京は、ライン内の石をバケツの中に入れて集めていった。
ふぅ…だいぶ拾ったな。
「捨ててくるわ」
「待って。私もいく」
京は、よいしょっと立ち上がってバケツを持とうとしたが案外重かったらしく両手でやっと持っていた。
「俺が持っていくからいいよ」
「でも、申し訳ないよ」
いやいや、申し訳ないとかじゃなくてだね、男子どもがこっちを見てるし、女子どもも。「うわぁ、持ってあげないとかないわー」とかいってるし。
こういうことをいう場合は注意してほしい、案外聞こえるもんだよ。
「申し訳ないとかじゃないから。はよ渡せ」
俺は半ば強引にバケツを持った。
「あ、ありがとう」
「らしくないな。気にすんなよ」
さっきから男どもに視線で訴えられる。
「はやく、どっかいけ」と
そんなん待ってるくらいなら気にせず来いよ。
上位カーストの奴と一緒にいるならまだしも俺と一緒にいるだけだからお前ら来やすいだろ…
あきれながら、俺は捨て場所へ向かった。
んー、なんか背中に気配を感じますねぇ…
俺が振り向くと京がついてきていた。
「どうかしたか?」
「流石に、一人で行かせるのは気が引けたから…」
律儀だなぁ・・・
「気にしなくていいって言ったのに」
「栄治君が少し離れてから男子がじりじりと近づいてきたから逃げてきたのもあるんだけどね…」
あぁ…さいですか。欲望まるだしの獣状態で近づいたんだな…
「じゃあ、まあ、一緒にいくか…」
「うん」
ザーッとバケツに溜まっていた石が流れ出ていく。
「あと、どれくらいだ?」
うーん、よくみえないな。眼下に行ったほうがいいかな?
「あと、15分くらいで終わりですね」
「ラスト、がんばりますか」
俺と京は再び石拾いをした。
「ふぃー。きれいになったな」
今俺の顔は満足げな顔をしているんだろう。
となりの京が笑っている。
「そうですね。」
「そうだ、前々から思ってたんだけど敬語そろそろやめね?
無理強いするつもりはないけど」
関わってだいぶ時間がたったから敬語はむず痒い。
「そうですね…癖になってるのでできる限りタメでいきます。いや、いくね」
「無理はしなくていいからな」
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