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しかし私はちゃんと私服登校の許可を取っている。ポケットの中、生徒証と一緒に持っている許可証を出した。
「制服のサイズがあわないから、私服登校の許可はもらっています」
「だからってなんで制服の下にスカートを履くの。制服が着れるんだから制服で登校しなさい」
制服は着れるけど辛うじて体が隠れるだけでみっともないんだって、と言いたい。
しかしこの頭の固い川崎先生にそれを言って通じるとは思えない。
『制服が入るならそれでいいじゃない』で終わりそうだ。私が恥ずかしいだとか周囲のいたたまれない気持ちだとかは無視されるだろう。
「だいたい最近の貴方の格好のせいでちゃんと制服を着ない子が多いんです。悪影響なのよ、あなたは」
そして流行していた制服アレンジを私のせいにされてしまった。
確かにアリカちゃんほしなちゃんは私を真似たんだろうけど、全部が私のせいじゃないと思う。
とにかく川崎先生は鬼の形相でお説教モードに入った。保護者が周囲にいるからいつもみたいに怒鳴りちらしてはいないけれど、それでも顔はすっかり慣れた怒りの形になる。
そんな時、背後から慣れ親しんだ声がした。
「ぼ、僕はこの子の父親、保護者です。この子が何かしたのでしょうか?」
お父さんだ。少し頼りない様子だけれど、先生に叱られている私を見て声をかけてくれたらしい。
「小松さんのお父さんですか?今小夜子さんの制服の違反について話していた所です」
保護者相手だからおさえめに、しかし説教モードは継続した川崎先生。私は許可証をお父さんに見せて、それだけでお父さんは『身長が高いから制服がきつい』と察してくれたらしい。
「許可を得ているし、制服に厚着をしている形なんです。違反とは思えませんが」
「本来私服登校をするならジャージや華美でない服装です」
「だから制服なんじゃないですか」
「制服を着るなら制服、私服を着るなら私服を着ろと言っているんです」
「だから制服に何かを足すのなら別にいいじゃないですか。冷え対策や盗撮防止的にもいいことでしょう」
川崎先生はいつも通りだがお父さんもそれについていっている。
普段穏やかなお父さんなのに、私のために反論してくれているのだ。
「だいたい人間は同い年だって色んな人間がいるんです。背が高い低い痩せてる太ってる。そんな皆がずっと着ていられる制服を作れない方が悪いのでは?」
「で、ですから学校側としては私服許可は出していて」
「皆が制服の中、自分だけがまったく違う私服を着て登校するのは小学生には勇気がいる事ですよ。だから少しでも皆に合わせられるようアレンジをした方がいいじゃないですか」
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