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そして無言のザクロ君は言うまでもない。今はしていないけど、キツネのお面をつけるのは校則違反だ。ゼロ組にいる事は保護者も了承済みだろう。
「じゃあ参観日はこの四人でいいですね。あ、でもどうしても先生が授業に出られない用があったら強制的に全員元のクラスでやってもらいますから」
志水先生は疲れたように言うが、一番その可能性が高い。私は参観日だけはトラブルが起きない事を願った。
「それで作文テーマですが、」
先生は黒板に向かって書く。それを見て私とリーチ君はぎょっとした。
『将来の夢』
それは私達がこの間悩んだ内容だった。
「はい、将来の夢です。本当は川崎先生が『お父さんへの感謝』にしようと言い出したけど、今どきそれはないのでなんとか他の先生達と協力し阻止しました」
文句を出そうになる口をなんとか止めた。
将来の夢なんてお父さんへの感謝に比べればまだマシなお題だから、志水先生には感謝したい。
私みたいに離婚した家もあるし、ザクロ君みたいに死別した家もあるだろう。それにどうしたってお父さんに感謝できない家もある。そんな人は書くのに困る題材だ。読み上げるにしたってプライベートな事情がある。
川崎先生も世間知らずなところがあるから、皆が皆幸せな家庭で当然お父さんには感謝しているものだと思ってあんなテーマにしたのかもしれない。
「そういえばこのクラスでは作文の授業をした事がありませんでしたね。何か聞きたい事はありますか?」
「はーい。ぶっちゃけどう書けばうまくなんの?」
先生の質問タイムに、すぐさまリーチ君が手を上げた。
ものすごく単純な質問だ。けど私も聞きたい。作文の作法ならわかるが、それだけだ。もうどこが悪いかどう直せばいいかもわからないのだ。
「コツですか。一言で言うと『脳内女子児童に聞かせてみる』ですかね……」
とても真面目な顔をして先生はいつも通りの事を言った。
それができて成果でるの志水先生だけじゃない?という白けた目で私達は先生を見る。先生はとても心外なように反論した。
「こ、これが一番の上達方法なんですよ!?だって小さい女の子ってすぐ自分の話をするじゃないですか。それを防いで興味持って聞いてくれるように文章を作れば絶対に上達します!」
「……まぁわかんなくもねー話だけどな。男子児童じゃだめなの?」
「男子児童はどんなに面白い文章を書いても聞いてませんから」
「すげー偏見だ。けどまぁそうかも」
一理あるような話をする志水先生にちょっとは納得するリーチ君。
確かにわからなくもない話だ。
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