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医者にするお金が出せるとすれば大抵の学校のお金は出せる事になる。
でもそんな話は直接的にはしにくい。だから医者をおすすめする。
「将来ってのはさ。自分の能力上げきってから考えりゃいいんじゃね?普通は逆算して能力上げるもんだけど、小夜子ならそういうやり方もできるだろ」
「……うん。そうだね、ありがとう」
リーチ君は私が『明確な目標がなくてもがんばれる奴』だとしてアドバイスしてくれた。
将来の夢は絶対に決めなくちゃいけないものではない。毎日がんばれる人なら大丈夫、その言葉がなんだか嬉しかった。
■■■
「それでは、今日は作文を書いてもらいます。この作文は今度の参観日で読んでもらいますからねー」
その日は珍しく志水先生がずっと教室にいる日だった。
自習ではなくまともに行われる授業で志水先生が爽やかに言い出したのは作文。
作文と聞いてリーチ君はあからさまに嫌そうな顔をして、たすく君は笑顔のまま顔色を悪くする。
ザクロ君は……お面オフ状態だったけど表情は変わらなかった。
どうやら零組の半分は作文が苦手らしい。
「六年生の参観は全員その授業なんです。あ、そうそう。参観日、元のクラスで出たいという人はいますか?」
先生の質問の意味がわからない私に、いつものように隣のたすく君が説明してくれた。
「親がゼロ組の事を知らない場合は、参観日に元のクラスで授業受けれる事になっているんだよ」
「それは……クレーム予防のため?」
「そうかも。何も知らなくて自分の子供が差別されてるーって言い出す親も多いから。特に日曜にやる参観日は子供の事をよく知らない父親が来るし」
なるほど、ただでさえゼロ組の事は親にも言いにくい。私だって芸能事務所に所属したから零組行きとなったとして、お母さんはゼロ組のことを了承した。
ゼロ組行きを言えない子もいるし、いざゼロ組を見たら隔離された扱いに納得しないような親もいるだろう。
そして普段子供に無関心でありながら、不当な扱いを受けているのを見れば文句を言う父親もいるかもしれない。だからそのクレームを避けるための対応だ。
まぁ、参観日だけ元のクラスに戻るのはかなり居心地悪いだろうけど。
「俺は両親共にゼロ組の事知ってるしヨーニン派」
「僕も。なんか親ばかで恥ずかしいんだけど、『うちのこはゼロ組で当然』とか言ってるんだよね」
リーチ君のところはもちろん両親ともに零組を知っている。
そしてたすく君のところも。多分たすく君は頭の出来が良すぎるから普通のクラスじゃダメだと両親も考えているのかもしれない。
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