3
言われて、私はワンピースの上にパーカーを巻いてみた。大きな鏡がないからよくわからないけれど、後ろ姿のスカートを気にしなくていいのはかなり落ち着く。スカートもひらひらするのが押さえられていい。
「うん、いいな。お前足長いから、パーカー結んだ腰の位置が高くてかっこいい」
「そ、そうかな?」
褒められて照れくさいが、家が芸能事務所で見る目が超えてるリーチ君が言うのなら見たままの事実だ。お世辞や何かではないから信用できて、それゆえにさらに照れる。
制服ワンピースはゆるっとしてるから、ウエストでパーカーを巻いたらめりはりがつくのかもしれない。それにウエストでしめて強調すればぱつんぱつんな肩や胸もそういうデザインに思える。
にしても、リーチ君は意外に女の子のファッションに詳しい。多分お姉さん三人の教育のおかげだけど。
前にミロワールのデザイナーパタンナーさんと連絡先を交換してたし、こういう業界にも興味があるのかもしれない。
■■■
バス定期内にウニクロがあったため、私はそこで制服アレンジアイテムを買った。
リーチ君とは店内で別行動となった。彼はキッズ、私はレディースなので仕方ない。さすがの彼もレディースは見てもおもしろくないだろう。
そして合流のためキッズ売り場に行く途中、メンズ売り場を見て思い出した。
売り場は父の日が近いからプレゼントにいいものを中心に並んでいる。そうして思い出したのは、離婚して離れて暮らす父の事だった。
この事もリーチ君に相談してみる。制服の相談にのってくれたリーチ君なら、お父さんの相談にものってくれるはず。
「親父さんへのプレゼント?」
「うん。今度会うの。でもちょっと気が進まないっていうか」
ウニクロの隣にあるファーストフード店。そこで休憩がてら、私はリーチ君に相談した。平日昼間はあまり客がいないが、もう少ししたら中高生のお客さんが増える頃だろう。
ちなみにここはリーチ君の奢りだ。なんでも知り合いからここで使える金券的なものを貰っているらしい。
そこのシェイクを飲みながら、リーチ君は一瞬深刻そうに考える。
「親父さんと仲悪いの?」
「悪いとかじゃないと思う。でも離婚原因がね」
「もしかして不倫的な?」
「……お父さん、五股みたいなことしたんだって」
私の呟きにリーチ君はシェイクを吸う力を無くした。
五股。人様に言ってよいのかわからない話だけれど、それが真実なのだから仕方ない。
頭の回転の早いリーチ君もそこまで考えはしなかっただろう。
「うちのお父さんモテるの。背は高くてとくにイケメンではないけど老けにくい顔立ちで、性格は優しくて人を否定したりしない人だから」
「そりゃあモテるわ。で、職業は?」
「医者」
「……それで相手を否定しない人なら五股はしてしまうかもな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます