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私が心配している事。それは真面目な雰囲気の格好をした大人の体格の人間がランドセルを背負う事。

それは『どうみても成人女性がランドセルを背負っている』ように見えて、今よりずっと『やばい人』になってしまう。

今までだってこの身長でランドセルを背負う事で目立ってはいた。しかしこの小学校の制服を着ているから、なんとか『背が高い小学生』と周囲は思ってくれる。

しかし私服を着ればそう思われない。だから気が乗らなかった。


「ああ……それもそうだな。私服じゃ先生と間違われそうだし、ただでさえ小夜子は目立つからな」

「制服を伸ばしたりとか、特注にできたらいいんですけど」


さらにリーチ君と先生は考えてくれる。そのうちリーチ君はピンとひらめいたようで、明るい声を上げた。


「アレンジはどうだ?ちょっと暑いけど、ワンピースの下に薄手で細めのズボンとかはくんだよ」


私はそのアイデアを頭の中に描いてみる。短いワンピースを着れば制服。その下にズボンをはけばパンツが見える事は気にしなくていい。制服でありながら、私のなんとかしたい部分をカバーできている。


「あ、それいいですね。レギンスを履いて、襟元のボタンも外して見せてもいいキャミソールを着るといいと思います。その、そこも苦しそうなので」


志水先生がこっそり指摘したのは肩幅と胸だ。首や二の腕に余裕はあるけれど、肩幅と胸はきつい。胸元のボタンをしめると苦しいから、最初からボタンを開けていいようにするのもいいかもしれない。


「一応私服登校の許可もとりましょう。重ね着の制服アレンジですけど文句を言う先生もいるでしょうし。用紙取ってきます」


先生は用事が増えたはずなのに楽しそうに職員室へと戻る。先生はいつも女の子が犯罪に巻き込まれないかどうかを気遣ってくれている。だからといって防犯のためにおしゃれを諦めさせるのもよくないと、こんなにも親身になってくれているようだ。


「よし、じゃあ小夜子。今日一緒に買い物に行こうぜ。ウニクロとかならちょうどいいのあるだろ」

「うん。それなら手持ちでなんとかなるかも」


ウニクロはどこにでもあるような大型衣料品店だ。凝ったデザインはないけれど、シンプルで安いものがいっぱいある。レギンスやキャミソールなら千円以下で買えるだろうからちょうどいい。

そしてリーチ君はもし私がお金を持っていなかった時たてかえるつもりもあるので、ついてきてくれるようだ。


「そうだ。今日のところはこれ腰に巻いとけば?」


思い出したようにリーチ君は長袖パーカーを私に預ける。確かにこれを巻けばパンツ見え防止にはなるけど、さすがに借りるのは悪い。


「いいの?一日中借りる事になっちゃうけど」

「いいよ。どうせ着ないし。それ巻くとバランス変わると思う。コーデの参考だよ」

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