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「……うん」


内海さんに聞かれ、気まずそうに答えたのは加々美さんだった。

もしかして、と私が気付くより早くリーチ君はにやにやして加々美さんをからかいだした。


「加々美さん、志水先生の事好きだったの?中三の時に?中一の先生を?うわ、ロリコンじゃん」


リーチ君の小学生男子スイッチが入ってしまった。可哀想に加々美さんは真っ赤になって涙目だ。

ちなみにロリコンとしてはは志水先生のが上だ。二歳差なんて大した年の差じゃないし、見た目だけなら美男美女でお似合いなのに。


「……あ、もしかして加々美さんの初恋の人って、志水先生なの?」


私も小学生スイッチが入ったらしい。過去にした話を思い出して、それに繋がる。

私に似ているという好きな人。それが志水先生というのは光栄だ。

けど加々美さんは余計恥ずかしくなったのか、さらに赤くなって固まった。


「まぁ、あんまいじりすぎないでやってくれ。ガチ恋なんだ。加々美は志水さんの恋から服作ってるほどだから」

「ガチ恋?」

「加々美は中等部時代、好き過ぎて声もかけられずに影から見てたんだ。まぁ他の男もそんなもんだったけどね」


恥ずかしがる加々美さんの代わりに内海さんが言う。そのあたりリーチ君の予想通りだ。

加々美さんは志水先生に本気で恋をしていた。それはもう、職業選択など一生ひきずる程に。


「じゃあさ、志水先生に会ってく?今ちょうど近くにいるんだよ」

「えぇっ」

「おっ、いいじゃん、会おうよ。せっかく小夜子ちゃんっていう共通点もできた事だし」

「ま、まってむり、こんな格好だし」

「だいじょーぶ、イケメンだよ加々美さんは。それに志水先生は男が相手ならださかろうがおしゃれだろうが対応変わんないし」


乗り気なリーチ君と内海さんが、いつまでたっても前に進まないような加々美さんを引っ張り進む。

成人男性という時点で志水先生的にはどうでもいいはず。今普通におしゃれな加々美さんは会っていいと私も思う。


「で、志水さんはどこにいるの?」

「図書室だよ。今皆でそっちにいるんだ」

「図書室、ってなんでまた」

「調べごとしてるからなんだけど、なんかおかしい?」

「……うーん、怪談も十年経つとなくなっちゃうのかなって」


加々美さんをひっぱりながら、内海さんは残念そうに言った。

怪談のある図書室にいる私達に違和感を覚えたのだろう。けどそんなに気にするようなものではないはずだ。


「私達、その図書室の怪談を作ったんだよね」

「え?」


怪談を、作った?

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