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「ううん、私がちゃんと管理していなければこうならなかったわけだし」

「いや、僕が勝手に持っていったからいけなかったんだ。ごめん」


ほしなちゃんも謝る。ついでに神田君も謝って、この件は解決した。

しかしアリカちゃんの体は、今まで見守っていただけの私の方へと向いた。


「小夜子ちゃんも、ごめんね。私の態度、よくなかったよね」

「え?」


これは予想もしていなかった謝罪だった。次はほしなちゃんも私の方を向く。


「……私も、態度悪かったと思う。小夜子ちゃんが一緒に探してくれなかったこと、嫌だったの」


アリカちゃんも謝った。釣られて、というよりは昨日の晩から考えていたような謝罪だ。

しかし一体どうしたんだろう。私は何も話していないし、リーチ君だってあの様子なら二人を避けて何も話していないはずなのに。


「小夜子ちゃんは仕事があって、もう私達なんてどうでもいいんだって思ってたの。本当はこんなにも私達を助けてくれたのに」

「うん。小夜子ちゃんはお仕事だったけど、それでも私達のことを考えてくれた。小夜子ちゃんは頑張ってるのに、勝手にすねちゃってごめんね」


どういう訳か私がわかって欲しいことをもうわかってくれている。

嬉しいんだけどどういう事情かわからない。そしてそのまま始業のチャイムが鳴り私はゼロ組に帰らなくてはいけなくなった。





■■■






ゼロ組の教室に戻れば、その謎はすぐに解明した。


「あぁ、その話したの僕だね。ほしなちゃんと手分けして写真集探している時にお話したんだ」


先生はやはり留守の自習時間。隣の席にいるたすく君はそう言った。


「今までいかに小夜子ちゃんがお仕事のためにがんばってるか教えたんだよ。だからほしなちゃん、応援しようと思ったんじゃないかな」


さらりと言うたすく君だけど、彼は私達三人の問題をまったく知らない。

つまり天然でほしなちゃんの考えをがらりと変えたようだ。


「僕はアリカと話をしたよ。あの子が音楽室でピアノ弾いてたからほめただけだけど」


斜め前の席のザクロ君がそう答える。

キツネ面から表情は掴めないけれど、本人も特に何の意識をしなかったのだろう。そしてそれが説得になった。


「あの子、今度ピアノのコンクールがあるんだって。がんばりたいけどがんばったら友達がいなくなるのが嫌だって言ってた」


がんばっているから友情を疑われている私を見て、アリカちゃんは後悔したのだろう。

こんな状態じゃ自分もがんばれない。誰にも認められない。

そんな後悔から反省した。

きっとほしなちゃんもそうだ。ダンスをがんばっているのに、このまま堂々とがんばれないのは嫌なはずだ。

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