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うんざりする話だ。努力した結果なのにそれを友達が認めてくれないなんて。
「……あれ、じゃあもしかして、昨日藤子さんが迎えに来たのってリーチ君が私のために頼んでくれたの?」
「まぁな。藤子ねーちゃんが小夜子に会いたがってたのもあるけど」
藤子さんは態度は厳しいものだけど私を励ましてくれた。先輩として、精一杯の力を出せるよう言っていた。
あれは多分、私が変な迷いから仕事をやめようと思わせないための、リーチ君なりの気遣いだ。
藤子さんみたいに一生懸命でモデルの仕事をやりたがってる人を見ておきながら、『友達に嫌われたくないからやめる』なんて事はできない。
それは選んでくれた人、協力してくれた人、選ばれなかった人をバカにしてる。
「ありがとう、リーチ君」
「こ、こんな事で仕事やめるなんて馬鹿げてると思っただけだ」
「うん。仕事はやめない。リーチ君や藤子さんみたいな人がいるってわかっているから」
感謝の言葉に恥ずかしそうにするリーチ君は少し意外だ。いつも彼は普通の小学生男子なら恥ずかしがるような事を平気でやるのに、恥ずかしいと思うポイントが少しずれていると思う。
「とりあえず、朝のうちに一組まで写真集を渡して事情を説明してくるね。確か神田君、朝早い方だし」
「あぁ。けど友達二人はどうする?」
「一度ちゃんと話してみるよ。それでも仕事に文句を言うなら、もう近寄らないでおく」
今のうちにはっきり決めておく。今までの友達とお別れする事になるのは辛いけど、私は自分を認めてくれた仕事ともお別れしたくないしこれからもがんばりたい。
そうして向かった六年一組の教室にはもう結構な数の生徒が集まっていた。
そんな中、一組に入った途端に私は注目を浴びた。
私は皆からしてみれば元クラスメイトで追放された身だから当然だ。けれどその視線に負けないよう背筋を伸ばす。
「神田君」
まず私は神田君に声をかけようとした。しかし彼は既にアリカちゃんほしなちゃんと一緒にいる。
きっと神田君は一足先に写真集がなくなった理由を伝えているのだろう。
二人を前にするのは少し怖いけど、伝わっていたなら話が早い。
「アリカちゃん。これ、リーチ君が神田君と一緒に探した写真集。とりあえずアリカちゃんに返すね」
アリカちゃんがほしなちゃんのいい加減さを許しているかはわからない。けど持ち主であるアリカちゃんに写真集を返すのが一番いいと思った。
アリカちゃんは受けとると震えた声で謝った。
「ごめんね。ほしなちゃん。疑ったりして」
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