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きっとリーチ君の判断で悪い事は何もない。もし変な提案をしたとしてもそれは私には想像つかないような先回りしたからで、写真集の件もきっとそうだ。


「ねぇ、たすく君はリーチ君から、写真集の件から手をひくって聞いた?」

「あ、うん。小夜子ちゃんが帰ってから合流して、その時にね。『どうしても見つからなかったら霰のサイン付き写真集もらってきてやる』って」


それを聞くと『手を引く』冷たい人間のようには思えない。

一番いい方法とまではいかなくても、丸くおさめる方法と言えるのだから。


「それを聞いて、ほしなちゃんは何て言ってた?」

「びっくりしてたみたいだけど、疑いは晴らしたいから写真集を探す事は続けるって。僕とザクロ君も写真集探しは続けようと思う。ザクロ君はアリカちゃんに話聞いてみるって」

「リーチ君は手をひくのに?」

「うーん……うまく言えないけど、自分が納得いくまで動きたいっていうのかな」


たすく君もザクロ君も写真集を探すのが一番の方法だと思っている。リーチ君の判断も信じてはいる。

ただリーチ君の判断を知らないし予想できないうちは自分の考えで行動したいのだろう。

だから二人は変わらず写真集を探してくれる。自分が信じている事だから。


「とりあえずリーチ君は言ってくれればすぐにサインもらってくれるって」

「……うん。見放した訳じゃないんだよね」


私達が諦めればすぐ最終手段を取ってくれるというだけ。冷たいなんてはずはない。

そういえば、とたすく君は付け足す。


「写真集なんだけど、太田君が盗んだっていうセンだけはないと思う」

「ほんと?」

「うん、ザクロ君が聞いたんだ。二人、低学年の頃に仲がよかったって話だから」


そういえばザクロ君がサッカー部に助っ人に入った時、太田もいた。

二人は運動神経がいいようだからその繋がりで仲が良かったのかもしれない。しかし今は太田がアレだから完全に仲がいいとは言えないけど、対等だから話くらいなら聞ける。


「太田君は『いじめられっこの大事な本を目の前で奪ってバカにして、いじめられっこが泣くまでの間が楽しい』って言ってたから犯人じゃないよ」

「……うん。犯人じゃないけど最低だね」


予想はしていたけど、太田は霰の写真集を盗んだ犯人ではない。

太田ならほしなちゃんの目の前で盗って泣かすのだから。


「それにしても、着替えから考えて犯人が男子ならその動機はなんだろう。霰のファンって可能性は少なくなるよね」

「……ほしなちゃんかアリカちゃんのファン、とか?」


私はふと気付いた可能性を口に出してみる。二人はお世辞抜きで可愛いと私は思う。

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