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クラスでは派手とは言えないけれど、おしとやかなアリカちゃんと活発なほしなちゃんを好きって男子は密かにいるはずだ。
そんな男子が霰に強い敵意を抱いて写真集を盗んだ、という説も考えられる。
「僕もそれあり得ると思う……後はお姉さんか妹がファンだから盗んででも欲しいとかかな」
「動機じゃ犯人を絞れそうにないね」
たすく君は様々なことを覚えられるけど、考える事は得意じゃない。けどそれはリーチ君程ではないという意味だけど。
こんな時リーチ君がいたらどんな風に考えられるんだろう。つくづくリーチ君が手伝ってくれない事が惜しい。
「おはよう」
キツネ面無しのザクロ君が教室につく。相変わらずの天使のような美少年ぶりだ。
そして紺色のランドセルを置き、席につくとキツネ面を被る。どうやら登校中はお面を外しておく事にしたらしい。
そして無口な彼は用件だけを告げる。
「途中、志水先生に会った。今日は一時間目、図書館で勝手に読書だって」
「あ、そうなんだ。志水先生は何の用事なの?」
「えらい人がお客様で来るらしいから、その対応」
いつもの先生への雑用なのかいびりなのかわからない仕事の押し付けだ。でも図書室を使うという事は一時間ぐらいで終わるかもしれない。
私の通う学校には図書室の時間があって、その時間は図書室で好きに本を読んでいい事になっている。そういう機会でも作らないと本を読まない子供が多いからだ。
「そういえばこのクラス、学級文庫とかないよね」
学級文庫とは図書室からクラスに貸し出した本の事。これも読書離れ対策の一環だろう。
その学年に適した内容の本を教室に置く。教室内で休み時間に読んでいいことになっているらしい。貸し出し期間などはとくになく、一年は教室に置きっぱなしになるものだ。
「クラスに四人しかいないからね。普通に図書室で本を借りるのがはやいと思うよ」
「そっか。私、今まで雨の日とかは読んでたけど、これからは直接借りに行くしかなさそうだね」
しかし実際本を読みたいと思っても図書室まで足を運ぶかというと別問題だ。
こういう余裕のなさが読書離れに繋がるのかもしれない。
「おはよー」
遅刻ギリギリにリーチ君が登校して眠そうな声で挨拶する。
私はそれになんだか気まずさを覚えたけど、リーチ君はいつも通りだ。私の前の席に座ると振り返り話しかける。
「今日も小夜子の仕事の迎えに人が来るけど、いつもと違う人だから」
「え?なんて人?」
「……会えばわかるような人だから、他の人について行くなよ」
多分これは事務所の蘭子さんからの連絡事項なのだろう。
いつもの人が迎えに来れないから、別の人を迎えに行かせる。けれど何の話もないと『迎えに来た』という人を私は警戒するかもしれない
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