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なんだろう、この違和感は。

女の子特有の、敵なのにそれを周囲に知られないようにする交流みたいな。

よく女の子の友情はネチネチしていると言うけれど、それは敵とも仲良くしようとした結果だと思う。

本当は嫌っている相手でも、他の人と仲良くやっていくには表面上は仲良くしなければいけない。

よく言えば平和主義なのだろう。敵にも笑いかけていれば大きなケンカにもならないのだから。

ただ私達はそうふるまうのがそこまでうまい訳ではないから、男子やよそのコミュニティにはいびつに、『ネチネチ』しているように見えてしまう。


そんな接し方を、今私は二人にされている。

五年生まではそんな事はなかった。目立つグループでもない私達は本当の意味で仲が良かったはずだ。


なのに、どうして?






■■■






違和感を覚えながらも午後の授業が終わってすぐ、私はゼロ組とほしなちゃんを改めて引き合わせる事にした。


「わかった。霰の写真集だな。特別課題でそれを探そう」


ほしなちゃんから話を聞いて、リーチ君は予想通り引き受けてくれた。ザクロ君もたすく君もいつも通り助けてくれそう。


「ありがとう、三人とも」

「気にすんな。疑われるのって気分悪いからな」


リーチ君はほしなちゃんにあたたかい言葉をかける。ゼロ組のこの頼れるかんじ、いつも通りだ。


「じゃあ俺は小夜子と行動するから。そっちは三人で行動してくれ。ザクロは男子から話を聞いて、たすくはほしだの心あたりを洗っといてくれ」

「ほしなちゃんね」


リーチ君は頼りがいはあるけれど、人の名前は覚えていないらしい。

訂正しつつ、私はほっとした。

放課後私は打ち合わせがあるから先に帰ってしまう。

皆を巻き込んでおきながらほしなちゃんに『私先に帰るね』なんて言い辛いから、リーチ君と一緒に行動できて本当に良かった。これなら気にせず抜けられる。


「リーチ君、それで私達はどうするの?」


いつも何かを企んでいるようなリーチ君に、私は期待せず尋ねた。

多分今回も計画全てを教えてくれないけれど、リーチ君の判断なら悪いものではないはずだ。


手分けする事になり、私とリーチ君はまず一階にある事務員さん達の部屋を尋ねる事にした。そこなら学校内で見つかった落とし物が集められているからだ。

多分写真集なんていう学校に必要ないものはそこにはないだろうけど、一応だ。


「んー、ちょっと気になってさ。お前らどれだけ仲いいの?」


今一番聞かれたくない質問に私は戸惑った。

以前なら一番の仲良しだと言っていただろう。けれど今は言えない。

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