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ロッカーの鍵はいじめ対策の一つだ。
学校帰りに習い事に行く生徒も鍵をつける事は多い。例えばヴァイオリンだとか、そんな高価なものを学校に持って来て盗難に合えば学校も困るから、『鍵をつけないあなたが悪い』と盗難の責任逃れをするための鍵だ。
でもたしか、ほしなちゃんはダンスを習っている。その練習着をロッカーにいれるから鍵をつけた事を私は忘れていない。
どうして嘘をついたのか。それとも事情があって鍵は外したのか。クラスを離れていた私にはわからない。
「それで、なくなったと気付いたのはいつ?」
「五時間目の体育が終わってから。更衣室で着替えて教室に戻ったらなかったの。写真集を入れていた袋だけが床に落ちていて」
体育の前後。という事は教室で着替える男子、例えば太田みたいなが盗んだ可能性が高い。
その時ならほしなちゃんは更衣室で着替えるため写真集から目を離す。男子は教室で着替える事が多いから、盗む機会はいっぱいある。
「ねぇ、もしかして阿藤が盗んだのかな?」
「……阿藤はないと思うよ」
私やリーチ君は阿藤の秘密を知っていて、阿藤はそれをばらされたくないから大人しくしているはずだ。なら私と近いほしなちゃんの物を盗んだりしないだろう。
なにより彼は心を入れ替えたのだと私は信じたい。
「男子の事は男子に聞いた方がいいかも。この事、ゼロ組の皆に相談してもいい?」
「いいの?、それなら私もありがたいけど」
「いいよ。皆と一緒に写真集を探してみよう。五人で探せばすぐ見つかるよ」
「うんうんっ、小夜子ちゃんも放課後手伝ってくれるんだよね?」
「あ……私は放課後無理かも。その、仕事で」
放課後だけは手伝えない。それを伝えるとやっと明るい笑顔を見せようとしていたほしなちゃんは、真顔となった。
どうしてだろう。ほしなちゃん、人見知りはしないタイプだから私がいなくてもゼロ組の皆を頼れると思うのに。
「……やっぱり小夜子ちゃんはそうなんだ」
そしてほしなちゃんは昨日アリカちゃんが言ったような事を言った。何が『やっぱり』で『そう』なのか。
しかしそれを私が尋ねるより先に明るい笑顔になる。
「お仕事、順調なの?」
「う、うん。順調みたい。今度ブランドのモデルをするから、その打ち合わせがあるの」
「わぁ、どのブランド?」
「ミロワールっていうブランドなんだけど……」
「知ってる!高校生ぐらいのお姉さんに人気のブランドだよね。私も身長が伸びたらああいう格好したいなぁ」
先ほどの違和感が嘘のようにほしなちゃんは明るく語る。
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