7

ほしなちゃんが何も話さなかった事から察して、気の利いた言葉をかけてくれるリーチ君。

きっと彼は私が助けを求めれば助けてくれるだろう。






■■■






翌日、昼食時。

昨日に決めた通り、今日私はほしなちゃんと食べる事になっている。教室ではアリカちゃんがゼロ組の皆と食べている頃だろう。

私はランチルームの隅の方を選んで座りお弁当を広げて、ほしなちゃんはパンを購入した。

そしてほしなちゃんが一口も食べずに語りだす内容は、アリカちゃんの逆側だった。


「つまりほしなちゃんは霰の写真集をなくしてしまって、アリカちゃんには借りパクだって疑われてるんだよね?」

「うん……弁償しようとしてるけど、アリカちゃんは許してくれそうにないの」


ほしなちゃんはミニメロンパンを一つだけ買ったらしい。いくらなんでも少なすぎる。彼女は普段よく食べて運動する健康的な子なのに。

けど、それだけ彼女の悩みは深刻なのかもしれない。


「弁償はしなきゃね。けど、その前に写真集を探した方がいいと思う」


せめて彼女が楽になれるように、どうしたら許してくれるかを考えてみる。

なくなった写真集の弁償はしなくてはならない。けれどそれより大事なのはほしなちゃんの疑いを晴らす事だ。

借りパクしたと思われているところで弁償したって、『借りパクで予想以上に怒られたから弁償した振りをすることにした』という風にとられてしまう。

だから本がいつどうしてなくなって、現在どこにいったかを判明させないといけない。


「もしかしたら誰かが盗んだかもしれないし、そうだったら盗んだ人が何も責められずにのんきに過ごしてるって事になるでしょ」

「……そっか。そうだよね」


ほしなちゃんは考え方を変える。今は写真集を弁償する事より、その行方を考えた方がいい。


「詳しい話を教えて。いつアリカちゃんから借りたの?」

「朝……だったよ。教室で渡されて、手提げ袋に入れて机の横側にひっかけてたの」


私達の使う机、その横側には鞄などをひっかけておくフックがある。誰が盗んでもおかしくないような状態だ。


「ロッカーには入れなかったの?そっちは鍵がついてて安全だったよね」

「ロッカーは、……鍵をつけていなかったの。だから手元に置きたかったし、まさか盗まれるとは思わなかったから」


うちの学校の生徒には教室の外にロッカーが与えられて、そこに鍵をつける事もできる。

昨日のザクロ君みたいにバドミントンの道具を置いておけるものだ。

ただ、皆普通に物置として使っていて鍵までつける人はあまりいない。

低学年だと鍵を無くすトラブルは多いし、盗難なんてそうないと皆思っている。いじめでもない限りは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る