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「今練習しているのがサインの書かれたコインをまず曲げて、それを栓のした瓶の中に入れてまた出すってマジックなんですけど」
「それって曲げる必要あるの?」
「え、曲げた方が凄くないですか?」
なんて真剣な顔で言ってくる。確かに固いコインが曲がったら凄いけどさ。なんか盛り込み過ぎな感じ。
「栓のした瓶に入れるって、側面のガラスの部分を通してって事だろ? それだけでも凄くない?」
だってガラスをコインが通るんだよ? 意味分からなくない? なんで通るんだよ。
「確かにそうなんですけど。それをマザーに見せてもらった時本当に感動して。鳥肌が凄かったんですよね。こりゃ物質を変化させる魔法を使うしかないって」
・・・そう言えばピクシーは漫画ヲタクだった気がする。錬金術は対価もなしに出来ないんだよ?
「そうだけど、でもマザーはマジックでそれをするんですよ。それって本当に凄いし、自分でもしたくなるじゃないですか」
「それは分かる」
「分かるんですかっ」
当たり前だろ。誰だって自分が出来ないようなことをされたらそれに挑戦したくなるに決まっている。特に自分のしている分野だったら。
「俺だって光るカクテルを発表されたらやってみたいもん」
「ブラックライトを使えば簡単に出来ますよ?」
「そう言うんじゃなくて、カクテル自体が発光するやつ。まだそういうのはないんだけどさ」
天の川をカクテルにしたみたいな、そういうの。
「へぇ、もしそう言うのが出来たら飲ませてくださいね」
「出来たらね。それより今練習中のマジックを今度みせてよ」
「え~、下手だって笑うでしょ?」
「笑わねぇよ、失礼だな」
笑ったりするもんか。頑張る姿を笑うなんてこの世で一番のナンセンスだもの。
「頑張れよ」
「兄さんもね」
生意気っ。
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