妖精の吐息

カゲトモ

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「あれ? こんな時間に珍しいじゃん」

 良く知った小さな背中に声を掛けるとくるりと振り返った彼女は表情とは裏腹な言葉を吐いた。

「最悪ですよ!」

「元気だな」

 笑顔でそんな言葉を吐いた彼女はその顔のまま涙を流しそうに言葉を続けた。

「終電がもうないんですっ!」

「まぁこんな時間だしな」

 店を出る前に確認したスマホの画面では終電が丁度発車した時間だった。遅くまで店を閉められなかったりして片付けがずれこむとこういう時もたまにある。だから一応店と自宅は徒歩圏内にした。基本的に電車通勤だけど。

「わ~本当何も考えてなかったぁ」

「こんな時間までウィッチも開けていたの?」

 確か十二時にクローズだったはずだよな?

「いやぁ、その、居残ってマジックの練習をしていたら、こんな時間に・・・」

 なるほど。まだまだ新人のピクシーには練習は欠かせないもんな。

「でもいいの? 就業規則守れてなくない?」

 美肌の大敵だからと早寝早起きがマジックバーウィッチの就業規則だったと思うけど? この時間ならもうベッドに入ってないとおかしくない?

「・・・マザーはこんな時間までしていたことを知らないので」

「あ、いいの~?」

 なんて意地悪を言ってみると顔をくしゃりと中心に寄せて悔しそうに「いいのっ」と続けた。

「あたしが何時に店を出たのかは、分からないから・・・」

 まぁそりゃそうだけどさ。店主であるマザーがクローズを十二時にしているのは何も美肌を守るためだけじゃないと思うけどな。

「確かピクシーの家は歩いて行ける距離だったよな?」

「はい、歩ける距離なんですけど、駅降りてすぐの家なんで電車使っているんです」

「しゃーねぇな、送ってってやるよ」

「え」

 いや、なんでそんなに嫌そうな顔するの。もう結構知った仲だと思ったけど? 俺じゃ嫌か?

「タクシーの方がいいか?」

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