55

「折角海に来たんだし、お、泳ごう……か?」

「うん、いいよ!」


 あなたのぎこちない誘いにリコスは快く乗っかった。この反応から考えて、どうやら彼女も泳ぎたかったらしい。早速あなたは泳ぎやすいように下着一枚になる。

 で、リコスはと言うと、魔法で服を水着に着替えていた。それはまるで魔法少女の変身シーンのように。こうして彼女は可愛らしいフリルの付いたワンピースタイプの水着に着替えると、あなたよりも先に海に飛び込んでいった。


「ちょ、まずは準備体操……」


 飛び込む彼女の後ろ姿を気にしながら、あなたは律儀に準備体操を始める。あなたが体を解していると、先に海に飛び込んだリコスがブルブルと体を震わせながら戻ってきた。


「さ、寒い……」


 どうやらまだ泳ぐには水温が低すぎたらしい。そう言われてみて周りをよく見ると、何人かは浜辺を散歩していたものの、誰も泳いでいる人はいなかった。


「あはは、まだ泳ぐのは早かったね」

「折角海に来たのにー」


 こうして、不満そうな彼女をなだめながら遊泳は中止と言う事になった。あなたはまた服を着直して、リコスは魔法で通常の服に戻る。

 不完全燃焼の気持ちのまま、あなた達はこの時期尚早の海を後にした。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054886424135/episodes/1177354054886491134


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る