29

「一体、一体ここはどこなんだ?」


 初めて見る景色に好奇心を刺激されたあなたはキョロキョロと周りを見回しながら辺りをデタラメに歩き始めた。その時、興奮状態だったあなたは一緒に来ていたリコスの事をすっかり忘れてしまう。


「ちょっと!」


 ないがしろにさせた彼女の声にハッと我に返ったあなたはいつの間にか道の反対側を歩いていた事に気が付いた。2人の間には広い黒色の道路があって、そこを四角い鉄の箱がひっきりなしに行き交っている。

 離れ離れになった事に気付いたあなたはすぐに彼女と合流しようと、何も警戒する事なく目の前の黒い道を横切って彼女のもとに駆け寄っていった。


「危ない!」

「えっ……?」


 あなたが道路を横切っている途中で、そのアクシデントは発生する。あなたの目の前に大きな四角い鉄の箱が迫ってきていたのだ。刹那、あなたはその先に起こる未来を一瞬の内に想像する。それは当然、この鉄の箱にふっとばされると言う未来に他ならなかった。


 四角い鉄の箱から耳をつんざくような大きな音が鳴り響く。覚悟を決めたあなたは慌てるでもなく、騒ぐでもなく、どこか安らかな顔になっていた。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054886424135/episodes/1177354054886595841


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