1-7 逮捕(二度目)
使い古された椅子が軋む。
ずっと座っていて尻が痛いからと身体を傾けたらこうだ。
それに何だ、この狭っ苦しい部屋は?
まるで石牢のようだ。
「君はロマンス牢獄に投獄されていたとの事だが、ヤバメ村でも同様な乱心騒動を起こしたらしいな。実際のところクスリはやっているのか?」
向かいに座る若い女性に質問された。短い銀髪の美人だ。
「いえ、あの審問官」
「アシュリー、アシュリー異端審問官だ」
アシュリーは膝を組んで、両肘を抱いた。
ブラウスに包まれた豊かな胸がぎゅっと挟まれて、より膨らんだように見える。
俺はごくりと唾を呑んで、アシュリーのロケットおっぱいに目が釘付けだ。
「ふむ、同性愛の傾向は薄い、と」
さらさらさらっと供述書に羽根ペンを走らせるアシュリー。
今の……わざとか?
あざといというよりは賢い。
この異端審問官はかなりのやり手らしい。
「で、クスリは?」
「やっていません」
俺はきっぱりと否定して、無実を訴える。
「そう……。では、黒魔術を試した事は?」
アシュリーが質問を変えてきた。
俺は瞬間的に状況を把握して、自分の置かれた立場を理解した。
つまり悪魔憑きか何かを疑われている、という事なのだろう。
「地球からメラリオに転生したただの学生だったんですよ。こっちの黒魔術の知識を仕入れる暇なんてまだ無かったですしね」
「転生? 女神の導きで、か?」
「何だか、学生みたいな格好をした女神で、候補生だったみたいですけど」
「その女神の名は?」
「シャル・シュって言ってましたけど」
「ほう! もっと詳しく」
アシュリーが興味を示している。
俺は助かりたい一心で熱心に話し始めた。
「一見頭は軽そうなのにかなり計算が出来るタイプ。金髪でちょっと野蛮な感じ。でも、美少女に入るかな。何だか単位が足りないとか言って、補習で転生者を集めていたみたいでした。メラリオの司祭が熱心に祈祷するものだから仕事が増えてしまった、と」
さらさらさらと供述書に羽根ペンで書き込んで、アシュリーは満足気な笑みを浮かべた。
「あの……」
「君が乱心を起こしたのは急な転生で混乱した所為だろう」
「あ」
やった! この人話が分かる!
「しかし、女神を侮辱した事には少々仕置きが必要だな。頭が軽そうとか野蛮とか、不敬にも程がある」
さー、と血の気が引いていく。
「仕置きって、どんな?」
「ズボンを脱ぎなさい」
アシュリーが向こうを向く。
「あの、」
「パンツも脱ぎなさい」
振り返ったアシュリーの手に細長い物体が握られている。
あの形は見た事がある。
確か競馬の中継で。
これから何をされるのかおおよそ分かってしまい、少しの安心と妙な胸の高まりを覚えた。
俺は急いでズボンとパンツを脱いで、四つん這いになった。
「ふむ」
ひゅん、と空を切る鋭い音がして、パシーン、といい音が鳴った。
奏でた楽器は俺の尻だ。
「ああっ……!」
焼けるような痛みが尻に走り、電気が走ったように背筋が刺激された。
一瞬びくりと上半身が仰け反って、床に手を着くと尻の傷跡がひりひりと痛む感覚に全身がゾクゾクしてしまった。
「女神シャル・シュにもう一発を捧げる」
パシーン、と先程よりもきつい一撃が尻に見舞われ、俺はもう一段高い声を上げた。
「あーっ!」
あまりにも気持ちよくて、一瞬放尿しそうになってしまった。
未遂未遂。
「以上だ。仲間が迎えに来ているようだからすぐにパンツとズボンを穿きなさい」
え?
俺はドアの方を振り向いて、三人と目が合った。
パワーが唖然として、口元を押さええている。
ピアスが冷たい侮蔑の視線で俺を見下ろしている。
ギルティは手で目を覆って、あたふたしている。
「違うんだっ……! これはお仕置きで」
言いさして、俺は自分がまずい事を言っている事に気が付いた。
「あの、」
三人に手を伸ばして、バタン、とドアを閉められた。
「あ……」
力無く崩れ落ちた。
寝転んだままもそりとパンツとズボンを穿き、膝を抱えた。
「ううっ……」
泣いてしまった。
「ううっ……」
ただお仕置きされただけなのに。
「ううっ……」
惨めだ。
「ああ、忘れていた。司祭様のご祈祷を暗に非難した事に対しても仕置きが必要だな」
パシッ、と鞭で手を打つアシュリー。
俺は飛び上がりながら空中でズボンとパンツを脱ぎ、四つん這いでスタンバった。
「覚悟しろ。次は本気だ」
「喜んで!」
望むところだ!
この際もうどうでも良い!
シリアスにお願い! シリアスに!
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