第2話

今日もまた、メロウは村から出られなかった。サナトはそんなメロウを、色んな言い方で励まそうとしていた。

ところがその日は、いつもと少し違っていた。


「サナト、なんで俺なんか支えてくれるの?

巫女の仕事だって忙しいだろうに」

「んー、まぁ幼なじみのってヤツかな?」


いきなりの質問だったからそう言ったが、サナトはかなり焦った。

実は彼女、メロウの事が好きなのである。

だから誰が何と言おうと最後までついていく決心はあったし、元よりそのつもりだった。

父親はそんな彼女の決断を、決して許す事は無かった。


「お社はどうするつもりだ?」

「――祈るより、大切な事もあります。

行動しなければ、得られぬ恩恵もあります」

「魔王などどうだっていい。この村から出なければ安全なのだからな。

だからあんなボンクラなど放っておけ。お前はこの村の希望なのだからな……」


私にとっての【希望】を、人は【ボンクラ】と呼ぶ。

私には彼は、唯一無二だというのに。


確かに娘を思う気持ちは伝わって来ていたし、それに答えられれば何よりとも思っていた。だがこれはサナト自身の人生。すべてを父親に決められるものではない。

彼女は結局、父親との絆より、友情を選んで旅に出る事を決めた。


彼には誰も応援してくれる人がいない。

だからメロウの事を、私が支えよう。


どこまでも共に行く決意は出来ていた。

後はメロウが、ほんの一絞り、勇気を出すだけだった。

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腰抜け最強勇者が魔王を倒しに行くそうです。 アーモンド @armond-tree

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