参加作品紹介 『夫婦万歳』
せっかくなので気になった作品のひとつも挙げたいと思います。
夫婦万歳 メオトバンザイ
作・柳家文芸堂 氏
タイトルからなんとも明るい。タグにも"のろけ"と書かれていたりする。夫婦善哉を思い出すタイトルですが、ぼくはあれは読んだことはありません。しかし、この詩集は楽しいのです。あとがきで詩は書けないと言われていたが、立派に詩になっていると思います。全編良いのですが『海原雄山夫婦』という詩が印象が強いです。なんてったってぼくが幼い頃に美食という言葉に出会ったのは、やはり雄山先生、美味しんぼ、なんですよね。詩の中で海原雄山、ブリア・サヴァラン、
北大路魯山人に
"罪悪感は無かったですか
お金についてじゃなく
美食そのものに"
と、問いかけて書き手自身には罪悪感が少しあると述べている。でも生きるために必要だから、と続く。ここでの"生きる"はただ生命維持のための食事ではない。生きて活動する、それはパートナーと、夫と共にある生活のための食事なのだと思う。この幸せな生活の一部だからやめられない、のだ。夫婦万歳、というこの幸せを描くときに欠かせないから自然と詩になったのではないかな?とぼくは感じた。
また罪悪感という言葉、このトピックスの前に描いた自作詩・夏の盛りに 、の最後に美味いからこそ後ろ暗い、と描いた自分の言葉との共鳴を感じてしまった。本質的には違う、のだろうけれど、その言葉の意味の繋がりに引き寄せられたのだろう。この辺りの考察はいずれまとめたいですね。
夫婦の何気ない生活や関係性を料理に絡めて上手く詩にされています。ありきたりですが、食は生活に欠かせないから自然と一緒に住む人との関係性が現れるんじゃないでしょうか。もちろん、社会の変化とともにあるから食への価値観は多様化している。家族の食卓だってそうです。またこの詩集とは全く違う視点を読んでみたくもあります。
とにかく、気持ち良い詩集でした。ぜひ、また詩を描かれたら読んでみたいと思わせられるものがあります。
※ブリア・サヴァラン、フランスの政治家、法律家で味覚の生理学を著した。美味礼讃の呼び名の方が有名か。こんなことを書いている。『どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう。』、北大路魯山人は美味しんぼとセットで名はよく知られているだろうから説明は省く。海原雄山も同じく。
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