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「何かおかしいですか?」
「あ、いえ。本当に綺麗だなって思って」
ごまかす様に髪に刺さったかんざしを指差してみる。ガラスで作られた飾りはユラユラと揺れてとても涼し気だ。
「あぁコレですか? 素敵でしょう? 妹の作品なんです」
「妹さんの?」
「ガラス作家なんです。第六感はなくてもクリエイティブなスキルは持っているみたいで。お揃いで作ったからどうしても浴衣にあわせたいって言ってきて。浴衣まで用意されてしまいました」
「それは凄い。妹さんと仲良しなんですね」
「悪くはないですけど、いいように使われているだけです」
下に弟や妹がいる人はみんな口を揃えてそう言う。俺は一人っ子だからな。
「ちょっと羨ましいですよ」
兄弟喧嘩もしたことがないし、そうやって出かけることもないし。一人っ子は楽だけど少しさみしい気もする。
「嫌になることも多いですけどね。でも結局は可愛いといいますか」
「ふふ、今日も暑くなるみたいですから熱中症には注意してくださいね」
「そうみたいですね。花菱さんもご注意を。室内に居ても熱中症になりますから」
「ありがとうございます。それじゃぁお気を付けて、楽しんできてくださいね」
「人が多いのはあまり得意じゃないんですけど、楽しんできます」
いつもの猫背な丸い背中じゃなくて、しゃんと帯の結ばれた背中はいつもと違って。細いうなじも甘い柔らかなベビーパウダーの香りもどこか色っぽくて視線が、奪われた? いや、あまりにもいつも以上に人間味に溢れている表情だったから。
なんて。こんなことを考えていたってばれていたら・・・いや、むしろ視える人だしばれていたりして?
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