第一章 『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド)
1. 〝信州の狼〟
オオカミの遠吠えに警鐘が重なる。火煙に包まれた家屋を、集まった人々が遠巻きに見守る。
突然庭に面した窓ガラスが割れ、炎をまとった人影が飛び出た。低い垣根を飛び越え、歩道に降り立つと同時に爆発音が周囲に響く。火は不自然に消え、両手に赤と青の何かを抱えた少年が現れた。彼は少しずつ歩調を緩め、そして道路の中央まで来ると膝をついた。
周囲の人々が一斉に駆け寄る。ある者は倒れかけた少年を抱きとめ、ある者はペットボトルの水を与えようとする。しかし少年はそれに応じず、無言で腕を差し出し、抱えていたものを見せる。赤と青の産着をまとった二人の赤子。少年がそれぞれの口と鼻を覆っていた右手を、そして左手を開く。救助に当たった人たちが、ほとんど煤を被っていない赤子たちをしっかり受け止める。少年の両手が力なく落ち、正面の男性に倒れこむ。赤い産着の赤子が笑い、青い産着の赤子が大声をあげて泣き始めた。
サイレンの音が少しずつ近づいてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます