第27話 話せなくちゃダメですか?
「食道の方は大丈夫なんですが、口内の火傷が酷いですね。
少しの間、喋らない様に安静にしてて下さいね。お大事に」
「だ、そうよ」
氷室は医者に行ってからの事の全てを田辺、蒼、橘先輩に説明する。
俺は話さないように口周りを包帯で巻き、マスクまで付けている。
ちょっとの事でも激痛が走って話すどころじゃない。
幸いなことに、ここにはアイコンタクトだけで言いたいことを理解してくれる幼馴染みがいる。
俺はアイコンタクトをするべく氷室に視線を向ける。
『話せないけど、俺は大丈夫だから心配するな』
「話せない。でも大丈夫。と言ってるわ」
「おー、そうなんですか先輩?」
質問する風見に頷く。
やっぱり、長い付き合いなだけあるな。
「すごいですね。何で分かるんだろう?」
『俺にも分からん』
「分からないわ。悠斗もそうみたいね」
風見は少し唸り、突拍子の無い台詞を放つ。
「絆かなにかですかね」
『ないない』
否定の視線を風見と氷室に向けると氷室からの視線が冷たくなった。
「口を慎みなさい」
『慎む口が無いんですが』
「では、目を慎みなさい」
こいつ段々と精度上がってないか?
色々と氷室が恐いから少し黙っていよう。
「氷室先輩以外にそれ出来る人っているんですか?」
「私の知る限りだと家族みんなは分かるみたいよ。家族以外は私だけ」
「・・・私にも出来ますかね?」
いや、多分出来無いだろ。
「やってみたらどうかしら」
「じゃあやってみます」
いっつも思ってたけど、蒼、お前のその行動力って一体何なの?
蒼は近づき、座っている俺に視線を合わせる。
「先輩、こっち向いて下さい」
『何でだよ!いや、一応見るけどさ』
数秒間のアイコンタクトをするが、田辺からの視線が突き刺さってくる。
『湯豆腐食いたい』
「・・・」
見つめ合うが、蒼が目をそらしてしまう、僅かに頬が赤く染まる。
『照れんなよ!こっちまで恥ずかしくなっちゃうだろ』
「分かんなかったです」
『だよな』
「湯豆腐って言ってる様にしか思えません」
『分かんのかよ』
何で、食べるの方じゃなくて湯豆腐の方なんだよ。
蒼の理解力が良いのか、俺のアイコンタクトがわかりやすいのか。
どちらにしろ、本当に話さない大丈夫そうだな。
いや、これじゃ田辺に指示を送れない。
これじゃわざわざ部室に呼んだ意味が無い。
どうにかして指示を送らないと・・・。
携帯はいちいち確認してたらモロバレだ。
他には・・・氷室の協力も頼めそうにも無い。
何か・・何か手は無いのか!
ドアがバシンッと勢いよく開けられる。そういえばここのドア何かあるたび勢いよく開けられてるな。
そこに居たのは、予想外な人間だった。
「おっす~悠斗久し振りに来たぞ~ん?うわっ!誰?」
何事も無い様に入ってきた赤髪の男はカオスな状況に驚く。
ほんとに久し振りだな、我が個部一人目の幽霊部員。
「先輩、誰ですか?」
『こいつは・・・・・』
「俺は
『生徒会長だ』
「生徒会長だ」
苦手な人を好きになるのはダメですか? 浅田 時雨 @74932015
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。苦手な人を好きになるのはダメですか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます