第26話 いっそ話しちゃダメなのか?

昔話・・・と言うにはあまりにも最近過ぎるか。

思い出にひたっていると、背後から後悔と羞恥がにじりよってくる。

「ん?先輩顔赤いですけど大丈夫ですか?」

田辺の言葉で記憶の中から意識を戻され、自分の状況を理解する。

「だ、大丈夫だ問題ない」

「そ、そうっすか」

あの日、俺が初対面の人に当たり前なことを格好つけて言っていた所で当時どれ程焦っていたかを物語っている。

今、羞恥と後悔が俺の前身を打ち付ける。

思い出したくない事思い出しちゃったな、今でも恥ずかし過ぎて顔から火が出そうだ。

蒼が入部したのって、バカみたいな俺を笑う為だったのかな・・・。

いや、蒼はそんな奴じゃない。

黒歴史ここに極まれり!

とにかく、田辺の為に対策を・・・。

蒼の男への苦手意識について話すべきか、話さないべきか。

話せば、元から自身の無い田辺は更に自信を失う。

話さなければ、これからの行動に支障が出て、告白以前の問題になる。

これは結構難題だ。

「あいつの性格どうにかならないかな」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ!?今言ってた?」

「意味は分かりませんが、がっつり言ってました」

マジかよ。考え過ぎると漏れ出るって本当だったのか。

いっそ言うか。

「実はな、蒼は男が苦手なんだ」

「・・・」

信じられないだろうな。思い人がそんな所があるなんて、俺だったら信じたくない。

そういえば、昔。俺は小六の時、同じクラ

「そんなわけないでしょ」

危ない、もう一つの黒歴史を語って、あと二話くらい使うとこだった。

田辺は呆れ顔で言葉を続ける。

「そうだとしたら、何で先輩は大丈夫なんですか?」

ごもっとも、俺も言われるまで知らなかったし、そんなそぶりすらない。

未だに、俺もちょっと疑ってる。というか疑いたい。

だって悔しいじゃん。俺だけ男として見られてないって。

「でも本当なんだ。どうやら・・・・俺だけ男として見てないみたいなんだ」

「・・・・・ふっ」

「殴ってやろうか?」

こいつ鼻で笑いやがった。

ぜってえ許さねえ!俺はお前を絶対に許さねえ!

「よし、これからの方針が決まった。俺のサポートは全力でするから、

その代わりお前はどんな指図にも従って貰うからな。覚悟しとけよ」

「望む所ですよ」

「じゃあ今から、ちょっと風見に告ってこい」

「い、今から!?」

ザ・驚きの表情をあらわにする田辺を見て、思わず笑ってしまう。

「冗談だ。まあでも、そんぐらいの覚悟はしとけよ」

「・・・は・・・はい」

ま、同じかそれ以上の事させるけどな!!

心のドヤ顔を浮かべ、栗まんじゅうを真上に放り投げる。

見事落ちてくるまんじゅうをキャッチ、流れるように喉の方へ向かっていき、詰まった。

そして、パニックを起こしブレイクダンスからダンスを取り除いたようにもだえる。

「だ、大丈夫ですか」

「っ!っっ!!ーーーーーーー!!!(訳)お!お茶!!お茶ーーーーー!!!」

「お茶ですね。どうぞ!」

「っっっ!(訳)サンキュ!」

受け取ったお茶で詰まった栗まんじゅうを流し込む。

食道を強引に流れていく栗まんじゅうと煮え湯を思わせるお茶。

口と食道に熱さと激痛が走る。

「ブゥァアッチャァァァァァァァァァァアァア」

俺のブレイクダンスは終わらない。

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