第24話 思い出しても良いですか?

俺が二年生になってすぐの事。

俺はその時、死に物狂いで新一年生に声を掛けていた。

勿論、新入部員集めだ。

うちの学校の部活は幽霊部員を含まない総員が三人居なければいけないのだが、

当時の個部は部長松岡こと俺とミステリアスロリババアこと橘先輩しかまともに部活に来ていなかった。

言い方に棘があるように感じるがこの時はそう脳内で呼んでしまう程、追い込まれていた。

今何か悪寒が走ったが、話を続けよう。

部活を存続させるために俺と橘先輩は走った。

しかし、悲しいかな。

橘先輩は見た目のせいで、新一年生から三年生とは信じて貰えずに可愛がられるばかりで撃沈し、ここの所ぬいぐるみに埋まり「どうせ私は小っちゃいですよ~」と口をとがらせてねてしまった。

なので俺は一人で走ることになった訳だけど。

「ああ、すいません。俺バスケ部に」

「僕は演劇部に入ろうと」

「うるせぇ!俺は手芸部に入るって決めてんだよ!!」

「二十六戦中二十六敗・・・・残念だけど予想通り」

我ながら見事だな。

いやぁなーにがいけなかったんですかねー?

どっかの貝塚モグラが脳裏をよぎった。

友達ゼロ人いつもは一人。そんな人間が美味く人を誘える訳ない。

頼みの橘先輩も撃沈。

でも、絶対入部がルールのうちなら、サボれる部活って言うのを出しにしたら、 一人は釣れると思ったんだけどな。

屋上から寝ながら見上げる空は雲一つ無く、俺の焦る心の様に真っ青だ。

「みんな、青春してんだな」

呟きは思いの外大きな声になってしまった。

みんなが青春を謳歌している事は良いことだ。でも、俺の青春はあそこにしか無いんだ。

「あーもう。やっぱ人って居場所が無いとダメなのかね~」

キャラメルを一つ口に投げ入れる。

もうどうしようも無い時に自分を慰める為のキャラメルだ。

何か最近こうする事多くなったな。やっぱ俺にゃ、あの人みたいにはなれないか。

「そうですよ」

どこからか、聞き覚えの無い声が聞こえる。

誰だ?いや、屋上にのぼる事は校則違反だ。そんなことする奴は俺以外にいるはずが無い。

幻聴まで聞こえるなんて、本当に追い込まれているんだな。

「誰かは知らないけど、何でそう思うんだ?」

「・・・物事にはあるべき居場所があります。人は保持している物を守ろうとします。それは、一人一人違えども失いたくない理由があるからです」

「ふーん。まあ確かにそうだよな。いくら正当な理由があるからって居場所を取られるのはしゃくだよな」

「・・・取られる居場所があるだけいいじゃないですか!」

急に放たれた怒号に近い声で体が硬直する。

「・・・・あんたに何があったか知らないし、知った様な事べらべら話されるのも嫌だろうから、俺の話でもしようか。聞きたくないなら流してくれても良いぞ」

「・・・」

「俺は昔、いじめの対象になっていたんだ」

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